うむ。なるほど。

翌日、予定通り広めの応接室に数々の楽器が並べられた。
子供が使う事を前提にしているためか、昨日楽団で使用されていた楽器よりも小さめのものばかりだ。
シュルット(弦鳴楽器)メヤーラ(気鳴楽器)は一番目立つところに置いてある。基本的な楽器と言う事だろう。

「おはようございます。二日続けて来ていただいてありがとうございます。今日は色々な楽器があって、とても楽しみです」

一応、丁寧に挨拶はするけど、俺の目は楽器に釘付けだったと思う。失礼で申し訳ない。
昨日も来てくれた彼は、苦笑しながら定型文的な(おきまりの)挨拶をしてすぐに楽器の説明に移ってくれた。分かっているね。

演奏会前にユハに教えてもらったときは、大人用の楽器だったので、今回の子供用の楽器は全く感覚が違っていた。
シュルットも、爪に引っかけて弦を鳴らす仕様なのだが、そんなに痛くないような素材の弦に変わっていた。
メヤーラも、大人用のは鳴らすのに一苦労だったんだが、子供用のはくねくねが少なくなっているからかスッと音が鳴るようになっていた。
ソネア(膜鳴楽器)は置いてなかった。叩いて鳴らす楽器は、手が腫れる可能性があるから王族(おうぞく)には推奨されないという事らしい。
サラーハ(体鳴楽器)は、俺が前回楽しそうに鳴らしていたから一応持って来たと言われた。恥ずかしい。だって、綺麗な音だから気分も上がるでしょ。

他にも、色々な楽器が置いてあって、全く見たことのない不思議なものもたくさんあったが、見た事があるような楽器もいくつかあった。
どれもこれも楽しくて、色々と音を鳴らしてみた。

子供用のシュルットで花のワルツ(おチャイコさん)を弾いてみた。なかなか上手く出来たと思うが、如何せん長く弾くと指が痛くなった。
『す、素晴らしい!』と興奮する周囲をいったん無視して、シュルットに似ているけど昨日の演奏で弓を使っていたバイオリンのような楽器を手にする。
ほぼほぼバイオリンだ。弓を何度か往復させてみるが、開放弦(かいほうげん)の音が違った。これでは流石に演奏は難しい。

メヤーラもくねくねが少なくなって軽くなるとほぼトランペットだ。口だけで音を変化させることは出来るが、指のピストン(ボタン)の位置や音階の変え方が違っている。とりあえず、起床(きしょう)の合図だけ出してみたが、音はなかなかに良い。

他に何があるかな~。と探しながら、サラーハをチャリチャリ鳴らす。良い音だ。
その隣にあったのが、ティンパニみたいな太鼓。
足元の革部分を膝で押し込んだりしながら上を叩くと、音を変えられるらしい。
これは子供には難しいな。
体験するだけのために持って来てくれたらしい。それなら、体験しないと失礼だな。

俺は台に乗って上から叩く係。ユハが革部分を押したり緩めたりで音を変える係だ。
ユハが膝をグッと押し込むと音が高く変化して、緩めると低くなる。
なかなか面白い。
叩く場所も真ん中を叩いたり端を叩いたりすると、音が変わっていく。
割としっかりと張られているのでそこまで変化はないが、色々な音が出て楽しい。

そのまた隣にあったのが、ほぼほぼ木琴だ。
長さが徐々に変わる木が並べられていて、ちゃんとマレット(バチ)も置いてある。
マレットの頭もちゃんと丸い玉だ。しかも、柔らかそうな素材で包まれていて優しい音が鳴りそうだ。
木琴の隣に鉄琴も置いてあって、そちらのマレットは硬そうなので、優しい音と硬い音でしっかりと役割分担されているのも同じだ。
かえるの合唱(輪唱するやつ)だけちょっと叩いてみた。木琴はあまり経験が無いんだ。

他にも、色んな形の楽器が並べられているゾーンがあったが、恐らくすべて気鳴楽器だろう。
オカリナのような、それはもう色々な形の楽器が並べられている。
息の吹き込み方も色々な種類がありそうだ。
フルートのように下に吹き入れるものや、リコーダーのように(くわ)えて吹き込むもの、メヤーラと同じように唇を震わせて吹き込むもの、オーボエのようにリードを震わせるもの。
どれも楽しそうだが、このゾーンに手を出したら、酸欠でぶっ倒れそうなので全部吹いてみるのは自重(じちょう)した。

どれも魅力的な楽器ばかりで、見ているだけでも幸せだ。