うむ。なるほど。

演奏後は、ゼンツに促されて俺から退席する事になった。
一番偉い人から帰るってやつだな。
一応、楽団と後ろの花達にぺこりと会釈してから出る。

演奏会の後とかって、感想を言い合ったりしないのかな?
普通にゼンツに後宮の門まで案内されてしまった。
俺としては、この演奏会の素晴らしさを誰かと共有したいんだが。

「私はここまでで失礼いたします」

後宮の門でユハが待ってくれていたので、ゼンツからユハにバトンタッチされて、呆気なく俺は王宮へと連れ戻された。
落差が激しすぎるんだけど。
と不満に思っていたら、自室ではなく、応接間みたいなところに連れて行かれた。

「誰かと会うの?」

ユハに尋ねたら、微笑んで『お楽しみください』と言われた。
何を?

不思議に思いながら部屋に入ると、そこには先程見た楽団の中心に立っていた人が跪いていた。
後宮から普通に歩いて来たのに、どこで追い抜かれたんだ。

「ルイーナ様なら、お話されたいのではないかと、こちらへお招きいたしました」

なんて気が利くんだ。でも、急がせちゃったのでは?申し訳ない。
兎に角、俺と話をするために来てもらったのなら、存分に俺の感動を伝えようではないか。

「お呼び立てしてごめんなさい。先程の演奏は非常に感動いたしました。どうぞ、お座りください」

(へりくだ)り過ぎず、尊大(そんだい)過ぎない感じで話したいんだけど、ちゃんと出来ているだろうか。
とりあえず、俺はこの感動を誰かにぶちまけたくて仕方がないのだ。付き合ってくれ。

恐悦至極(きょうえつしごく)に御座います」

めちゃくちゃ硬いけど、椅子には座ってくれたので、話しても良いという事だろう。
ならば、遠慮はいらないな。

「まず一曲目ですが、入りが素晴らしかった。低音が心地よくこれから演奏が始まるというのを静かに優しく伝えてくれる音色。あの楽器は何ですか?」

俺は、一曲目の最初から事細かに感想を伝え、ついでに楽器の名前や特性などを教えてもらった。
最初は硬くて(うやうや)しい返しで教えてくれていた彼も、次第に硬さが取れてスラスラと話してくれるようになった。何と言うか、親戚の子供の相手をしてくれている大人って感じ。

楽器の名前を全部覚えるのは無理そうだけど、大体の特性とかは理解したと思う。
中でも気になったのは、やはり三人がかりで動かすグネグネの楽器だ。
楽器を移動させるときは、三人では力が足りないので五人で運んでいると言う。

ほとんどの楽器は、貴族の子息(しそく)が興味を持ったものを修業(しゅぎょう)するそうなのだが、この楽器だけは代々演奏する家系が決まっているという。
楽器の名前は、ラボラ。ラボラ男爵家の縁者(えんじゃ)だけがその演奏法を受け継いでいる。
一番大変なのは、同じ年頃の人間を三人揃える事だとか。

他にも、代々この楽団に所属している家もあるらしい。
特に、クルアール子爵家の人は、変わった楽器を扱う専門だ。
鳥の鳴き声や水音、宇宙を連想するような音が出る楽器は、この家の独自の楽器で、普通の人は演奏法を知る事も出来ないそうだ。

非常に話が盛り上がり、俺も何かしらの楽器を練習したくなった。
明日は、子供でも演奏しやすい楽器をいくつか持って来てくれるという事で、彼も満足そうに帰って行った。
ユハにも明日の予定を確認したら、最初からその予定になっていたらしい。