最近は、何となく俺の頭が母親の骨盤にぴったりフィットしたのか、動きにくくなった。
恐らく、もう外に出るのを待つだけといった感じなのだろう。
頭も身体も固定されて、たまにギュッと押し潰される。
痛いな。
特に、頭が痛い。
そう思った時には、もう他に何も考えられないほどの激痛が襲った。
痛い。痛い。痛い。
頭が砕けそうになりながら、何度も押し潰される。
身体も引き絞られて、たまに何かが容赦なく押さえつけてくる。
痛い。痛い。痛い。
死ぬほど痛い。
ふざけるな。
産みの痛みとはよく言うが、産まれの痛みなんて知りもしなかった。
痛い。痛い。
やめろ。やめろ。やめろ。
痛くて痛くて堪らないのに、声は出ない。
母親の苦しむ声が、骨を通して響いて来るが、知ったこっちゃない。
絶対に、俺の方が痛い。
痛い。痛いから。
ホント、もう勘弁してくれ。
もう無理だ。
押しつぶされそうな痛みに意識を奪われそうになった時。
唐突に眩しい光が俺の瞼を焼いた。
殊更眩しい光に、余計に苛立ちが募る。
それはもう、叫びまくってやった。
窓ガラスとか割れるんじゃないかという勢いで泣き叫んだ。
大人とか子供とか、そんなんどうだっていい。こんな痛みに耐えられる人間がいてたまるか。
苛立ちに任せて、それはもう泣き叫びまくった。
気付いたら誰かに抱きかかえられて、布で乱雑に拭かれていた。
その間も、手足をバタつかせて暴れ回ったし、耳がキーンとなるであろうほど泣き叫んだ。
だが、手足は全くバタつけなかったし、抱きかかえた誰かは微笑ましく、元気な男の子ですよとか何とか言ってた。
「信じられないほどの魔力量ですね」
どこかで、驚いたような声が聞こえたけど、無視だ無視。
でも、俺を抱きかかえていた誰かの手から、母親の胸の上に置かれると、途端に不思議と気持ちが安らいだ。
痛くて、苦しくて、辛くて、ムカついていたのが嘘のよう。
心の底から湧き出る幸福感に、俺は考えることをやめた。ここにずっといたい。
「血が止まりません!」
「このままでは――」
産まれて初めて感じた幸せにどっぷりと浸っていたのに、切迫した声が、俺の意識を現実へと引き戻した。
母親の出血が止まらないらしい。
「早く治癒を!」
「治癒魔法が効きません。」
父親の慌てた声、知らない男の焦った声。
なぜだとか、もう一度だとか、みんながみんな焦って怒鳴り合っている。
その声につられるように、ものすごい恐怖が俺の心を満たしていく。
「リル、リル……!」と、情けなく母親に縋るように呼び掛ける父親の声に、落ち着いていた俺の心も波のように揺れ始め、泣きたくないのに泣き始めてしまった。
そんな混沌の中で、母親は辛そうに息を切らしながらも、俺をそっと撫でてくれた。
――私の可愛い子。産まれてきてくれてありがとう。愛しているわ。
声になっては聞こえなくても、俺を優しく撫でる手から、圧倒的な慈愛が伝わってくる。
いっぱいいっぱいだった俺の心に、わずかな余裕が戻ってくる。
母親に抱かれる安心感と、母親を失うかも知れない恐怖と、グチャグチャの感情になりながらも、俺は母親に向けて、持てる限りの目一杯の力を向けた。
俺も愛しているよ。大好きだよ。産んでくれてありがとう。だから、もうしばらく側に居てくれ。死なないで。俺を置いて行かないで。
「傷が、治っていきます……!」
「この治癒魔法は、私のものではありません!」
「もしかして、この魔力は……」
「まさか、産まれたばかりだぞ。」
まるで何事も無かったかのようにみるみる出血が治まり、部屋にいる誰もが息を呑んだ。
母親は、変わらず胸の中の赤ん坊を、愛おしそうに優しく撫で続けた。
「ありがとう。私の愛しい子。私の愛しい――ルイーナ」
ん? あれ?
そういえば、俺の性別はどっちだ?
ちょっとした疑問を抱きながら、母親の胸に抱かれた俺は、心地よい眠りについた。
恐らく、もう外に出るのを待つだけといった感じなのだろう。
頭も身体も固定されて、たまにギュッと押し潰される。
痛いな。
特に、頭が痛い。
そう思った時には、もう他に何も考えられないほどの激痛が襲った。
痛い。痛い。痛い。
頭が砕けそうになりながら、何度も押し潰される。
身体も引き絞られて、たまに何かが容赦なく押さえつけてくる。
痛い。痛い。痛い。
死ぬほど痛い。
ふざけるな。
産みの痛みとはよく言うが、産まれの痛みなんて知りもしなかった。
痛い。痛い。
やめろ。やめろ。やめろ。
痛くて痛くて堪らないのに、声は出ない。
母親の苦しむ声が、骨を通して響いて来るが、知ったこっちゃない。
絶対に、俺の方が痛い。
痛い。痛いから。
ホント、もう勘弁してくれ。
もう無理だ。
押しつぶされそうな痛みに意識を奪われそうになった時。
唐突に眩しい光が俺の瞼を焼いた。
殊更眩しい光に、余計に苛立ちが募る。
それはもう、叫びまくってやった。
窓ガラスとか割れるんじゃないかという勢いで泣き叫んだ。
大人とか子供とか、そんなんどうだっていい。こんな痛みに耐えられる人間がいてたまるか。
苛立ちに任せて、それはもう泣き叫びまくった。
気付いたら誰かに抱きかかえられて、布で乱雑に拭かれていた。
その間も、手足をバタつかせて暴れ回ったし、耳がキーンとなるであろうほど泣き叫んだ。
だが、手足は全くバタつけなかったし、抱きかかえた誰かは微笑ましく、元気な男の子ですよとか何とか言ってた。
「信じられないほどの魔力量ですね」
どこかで、驚いたような声が聞こえたけど、無視だ無視。
でも、俺を抱きかかえていた誰かの手から、母親の胸の上に置かれると、途端に不思議と気持ちが安らいだ。
痛くて、苦しくて、辛くて、ムカついていたのが嘘のよう。
心の底から湧き出る幸福感に、俺は考えることをやめた。ここにずっといたい。
「血が止まりません!」
「このままでは――」
産まれて初めて感じた幸せにどっぷりと浸っていたのに、切迫した声が、俺の意識を現実へと引き戻した。
母親の出血が止まらないらしい。
「早く治癒を!」
「治癒魔法が効きません。」
父親の慌てた声、知らない男の焦った声。
なぜだとか、もう一度だとか、みんながみんな焦って怒鳴り合っている。
その声につられるように、ものすごい恐怖が俺の心を満たしていく。
「リル、リル……!」と、情けなく母親に縋るように呼び掛ける父親の声に、落ち着いていた俺の心も波のように揺れ始め、泣きたくないのに泣き始めてしまった。
そんな混沌の中で、母親は辛そうに息を切らしながらも、俺をそっと撫でてくれた。
――私の可愛い子。産まれてきてくれてありがとう。愛しているわ。
声になっては聞こえなくても、俺を優しく撫でる手から、圧倒的な慈愛が伝わってくる。
いっぱいいっぱいだった俺の心に、わずかな余裕が戻ってくる。
母親に抱かれる安心感と、母親を失うかも知れない恐怖と、グチャグチャの感情になりながらも、俺は母親に向けて、持てる限りの目一杯の力を向けた。
俺も愛しているよ。大好きだよ。産んでくれてありがとう。だから、もうしばらく側に居てくれ。死なないで。俺を置いて行かないで。
「傷が、治っていきます……!」
「この治癒魔法は、私のものではありません!」
「もしかして、この魔力は……」
「まさか、産まれたばかりだぞ。」
まるで何事も無かったかのようにみるみる出血が治まり、部屋にいる誰もが息を呑んだ。
母親は、変わらず胸の中の赤ん坊を、愛おしそうに優しく撫で続けた。
「ありがとう。私の愛しい子。私の愛しい――ルイーナ」
ん? あれ?
そういえば、俺の性別はどっちだ?
ちょっとした疑問を抱きながら、母親の胸に抱かれた俺は、心地よい眠りについた。

