うむ。なるほど。

ミームは早速、ペトに指示して消毒液の使用許可書を持って来てもらって、サインを書いて魔力を込めていた。
流石、君主制(くんしゅせい)は決断()実行で仕事が早い。

「さて。それよりも大事なお話だよ、ルイーナ」

真剣な顔で、唐突にミームが振り返って見つめてきた。
一体何事かと俺も真剣な顔で向き直る。

「陛下って何?パパのことはちゃんとパパって呼んでくれないと、困るんだけど」

どうでもいい事を言ってきた。
それ、そんなに真剣な顔で言う事か?
って言うか、パパって。
俺が死んだ頃は、世間では子供にママパパと呼ばせる家庭が増えている感じはあったが。
俺は絶対に嫌だ。
パパって呼ばれるのも呼ぶのも御免(ごめん)(こうむ)る。

別に、他人がパパとかダディとか呼ぶのは構わない。
あぁ、日本もグローバルになったもんだ。と思うだけだ。
でも自分で使うのは別だ。
なんか、何となく絶対嫌だ。そういう感性で生きてきたのをいきなりは変えられない。

言語が違うなら良いだろって思うかも知れないが、違うんだ。
こっちの言葉でも、父親のことを可愛く呼ぶ時に使ってそうなイメージなんだよ。
本来の呼び方とは違って、甘えてそうな奴が呼ぶ時に使う。そういう言葉として使われているんだ。だからミームも使わせたがっているんだろうし。

「ごめんなさい。その呼び方は無理。」

ミームが、背景にガーンと書いてあるのが見えそうな顔をするが、無理なものは無理だ。

「とぉさま、じゃ、ダメ?」

パパは言えないけど、ぶりっ子は出来る。
ミームに向き直って、両手をミームの両手に重ねて、見上げるような角度で、首をこてんと倒しながら、うるうるした目で見つめてみた。

「え、えぇ~。と、とぉさまかぁ~。ルイーナは何やっても可愛いなぁ~。しょうがないなぁ~。じゃあ、とぉさまで我慢しようかなぁ~」

デレデレと締まりのない顔でくねくねし始めた。
効果は抜群(バツグン)だ。
今なら、何を聞いても答えてくれそうだし、気になってることを聞いてみよう。

「ねぇ、とぉさま、あの赤ん坊のお名前って、いつ誰がつけるの?」

名前も付けられていない赤ん坊。
いつになったら名前が付けられるのか、ずっと気になっていたんだ。

「え、名前?そ、そうだね。名前は父親が神殿に提出するものなんだけど、まだ出てないのか。えっと、たしか、お名前はね、カツィだったと思うよ」


……え?
…………えぇぇぇ?!

ミームが父親じゃないってこと?!
って言うか、男も女も可愛い名前が付けられるって、言ってなかったか?!
なんか、言いにくいけど可愛い名前じゃないんですけど?!