うむ。なるほど。

もうちょっと抱いていたいとかブツブツ言いながらも、ミームは俺をソファに座らせて、大人しく隣に座ってくれた。
さっきまで置いてあった茶器やお菓子が片付けられて、新しいものが用意されている。

「それで、ルイーナはパパに会いたくなって、会いに来てくれたのかな?それとも、ママにも会いたくなった?」

まぁ、どっちにも会いたかったと言えば会いたかったけど。
ママに、じゃなくて、ママにもって言うのが面白い。
パパに会いたいが基本だけどって言いたいのか。

「えっと、ムレが赤ちゃん産んだんだけど。知ってる?」

ムレのことをどういう風に思っているのか謎なので、とにかくストレートに聞いてみた。
ミームは、ちょっと苦い顔で頷いた。
やっぱり、会いたくもない感じなのかな。

「その、赤ちゃんの、おへそが化膿(かのう)気味なんだ。俺じゃ、魔力が悪影響出ちゃいそうで治せなくて。えっと、陛下ならって思って」

会いたくも無いと思っているのなら、治してあげて欲しいなんて言うのも申し訳ないが。
でも、赤ん坊のへそ疾患は大事(おおごと)だと思う。
へその化膿を放置すると、そこから入った細菌が全身に回って敗血症(はいけつしょう)になったりするらしいし。

「そっか。そう言えば、ルイーナも赤ん坊の頃、おへそが化膿気味になって、パパがいつもキレイにしていたよ。清浄(せいじょう)魔法でね」

俺の頭を撫でながら、懐かしそうに話してくれた。

「じゃあ……」

「でも、その赤ん坊を治してあげることは出来ない」

希望を見出したと見上げると、ミームは硬い表情で首を振った。
嫌というより、無理という感じだ。

「何で?」

ミームは、俺に話すかどうか迷っている様子だった。
話してもいいけど、子供に話すような事だろうか。みたいな顔。
ちゃんと、話してくれ。俺はちゃんと理解してやるぞ。という顔で見つめてみた。
う~ん、でも、自分の一存ではどうにも。みたいな顔が返ってくる。

「あ、そうだ。確か後宮には、魔力が籠ってない消毒液が常備されているから、それの使用許可を出しておくよ。」

何と。
魔法が発達している国は医学や薬学が発展していないというのが異世界テンプレなのに、ちゃんと薬とかあるのか。
確かに、魔力が無い人が居るって事は、魔力でしか治癒できないと困るもんな。
全く考えもしなかった。

って言うか、そんなのがあるなら医者もさっさと使っとけよ。

「魔力が籠ってない薬って、屋敷一つ分くらいの値段がするから、なかなか使い時が難しいんだよね。こういう時くらいしか使わないし、使うなら有意義に使わないとね」

なるほど。
さっさと使わなかった理由(わけ)があったのね。