うむ。なるほど。

俺は、なかなか突破できない関門(かんもん)にイライラしていたのだが、ユハは終始(しゅうし)微笑(ほほえ)みを浮かべてペトの話を聞き流していた。
もしかして、ユハ最強なのでは?

「母上?ルイーナ様は、順調に成長なされておいでですので、どうぞご安心を。陛下の事を名で呼んでおられたのは、陛下御自身(ごじしん)のご要望ですので、どちらかと言えば、陛下をお(いさ)め下さい。それで、陛下はどちらに?」

次から次へと繰り出されるペトの攻撃のほんの隙間に、ユハのカウンターが繰り出される。
これにはペトも観念したのか、溜息をひとつ(こぼ)してから、『こちらよ。』と離宮へ入っていく。

「す、すごいな、ユハ」

怒涛(どとう)の勢いで繰り出される攻撃を止めることなく、隙間に()じ込んでいくとは。俺は凄い技を見た。
何より、母親に対してそんなに毅然(きぜん)と発言するなんて。勇者としか言いようがない。

「それに比べて、主は情けにゃいにゃ」

アイッシェンの言葉は無視するとして、俺は勇者に微笑まれて手を引かれながら離宮に入るのだった。

ペトに案内されたのは、離宮の客間(きゃくま)らしき所だ。
美味しそうなお菓子といい匂いのお茶が用意されている。俺の好みは把握済みらしい。
『少々お待ちください。』とペトは出て行ったが、多分、だいぶ待たされるだろうな。

「はぁ~、何か、ここ、落ち着くな~」

まったりすること、約一時間。
俺はメフィスレスとアイッシェンにベロベロに舐められて(くつろ)いでいた。

「ルイーナ様、そろそろ」

唐突にユハが立ち上がり、ピシッとし始めた。
何か聞こえたのか?
ユハは、普段から俺には聞こえないものが聞こえているようで、他人が部屋に近付くだいぶ前から準備を始める。
因みに、俺と召喚獣しかいない時は、俺の要望により一緒にまったりしてくれる。今も、ソファに座って、メフィスレスを気持ち良さそうに撫でていた。

俺もソファの上でちゃんと座って、魔力が周囲に広がらないよう注意しながら浄化する。
今までどんな体勢だったかと言うと、あれだ。昼間におかき食ってテレビ見る体勢だ。

丁度、俺が隅から隅まで綺麗に出来た頃。
客間の扉がバーンと開かれた。

「ルイーナ!私の可愛いルイーナ!会いに来てくれたんだね~!」

入って来たのは言わずもがな。
呼び捨てにするなんて許されるはずもない、高貴な親ばか(・・・)陛下だ。