その日、後宮も王宮も一つの報せで沸いた。
ムレの妊娠。
リルはもはや発狂しているのかと疑うほどの金切り声でミームを詰りまくった。
ミームは何も言わずそれを受け止めていたが、リルが疲れ果てた頃にスッと立ち上がり、一国の王としての絶対的な威厳をもって言葉を発した。
「ムレを王宮へ。リルを離宮へ。明日までには移動を終わらせよ」
何をどうするのがいいのかは分からない。この国の作法とかもあるのだろう。
俺には、正しいとか間違っているとか言う権利はない。
騎士達も、沈んだ面持ちでその冷徹な言葉を聞き、行動を開始した。
リルも分かってはいるのだろう。ムレに勝ち誇られる前に離宮へと移動した。
俺もリルと一緒に移動するのかと思いきや、俺は王宮に別の部屋を用意された。第一王位継承者、王太子としての部屋だという。
「ルイーナ、私の愛しいルイーナ。母親と引き離す私を許して欲しい。せめて、お前だけは側にいてくれ」
可哀想なミーム。哀れなリル。
高貴な人間には高貴な人間なりの苦労があるんだと、しみじみと感じた。
ムレに用意された部屋は、リルが居たのとは違う部屋だった。
つまり、王妃として認めた訳ではないということだ。
それでも、ムレは「私こそが次期王妃だ」と胸を張って王宮を闊歩していた。本当は、すでに始まった悪阻に物凄く苦しんでいたのに。
部屋を一歩でも出たら、額に脂汗をかいていても微笑みを絶やさない。
そういう、プライドを持って生きている人は凄いと思う。
ただ、ミームはムレの事が苦手なようだった。
「ミーム様、本日もご機嫌麗しゅう。私のお腹の子も、ルイーナ様同様可愛がってくださいませね。ミーム様の喜ばしき御子で御座いますもの」
何度も念を押され、どんどんミームはムレを見なくなっていった。
初めは一緒に取っていた夕食も、個々で取るようになった。
そして、いつしか、ミームは離宮と後宮にばかり入り浸るようになった。
他者の魔力に触れた日はリルに会いに離宮へ。
誰の魔力にも触れ合わなかった日とその翌日は後宮へ。
執務が忙しくてどちらにも移動できなかった日は、俺の部屋で寝る日々だ。
「何故なんですの。せっかく陛下のお子を授かったと言うのに、陛下のお渡りは遠のくばかり。一体、私の何が不満だと言うの……」
王の伴侶は腹に宿る子の魔力によって心力も増すと言われているにも関わらず、ムレは徐々に病んでいった。逆に、王宮から出されたにも拘わらず王と穏やかな日々を送れることになったリルは回復していった。
ミームも俺に触れない日が増えていった。
そして、ムレが産み月に入った二日後、リルの妊娠が発覚した。
さらにその後一週間の内に、リリシアとピスの妊娠も発覚した。
……おいミーム、お前ちょっと頑張りすぎだろ。もはや俺には、かけるべき言葉が何一つ無いのである。
「なぁ、メフィスレス、アイッシェン。俺、今日四歳になったと思うんだが、誰も祝ってくれないよ」
「三百年を超えて生きる我にとって、四年など瞬きの間よ。諦めよ」
「年を取ったからって、魔力がいきにゃり増える訳じゃにゃいにゃ。」
最近、なぜか頬っぺたではなく背中ばかりを舐めたがる召喚獣二匹にベタベタと舐められながら、俺は孤独な誕生日を満喫するのであった。
ムレの妊娠。
リルはもはや発狂しているのかと疑うほどの金切り声でミームを詰りまくった。
ミームは何も言わずそれを受け止めていたが、リルが疲れ果てた頃にスッと立ち上がり、一国の王としての絶対的な威厳をもって言葉を発した。
「ムレを王宮へ。リルを離宮へ。明日までには移動を終わらせよ」
何をどうするのがいいのかは分からない。この国の作法とかもあるのだろう。
俺には、正しいとか間違っているとか言う権利はない。
騎士達も、沈んだ面持ちでその冷徹な言葉を聞き、行動を開始した。
リルも分かってはいるのだろう。ムレに勝ち誇られる前に離宮へと移動した。
俺もリルと一緒に移動するのかと思いきや、俺は王宮に別の部屋を用意された。第一王位継承者、王太子としての部屋だという。
「ルイーナ、私の愛しいルイーナ。母親と引き離す私を許して欲しい。せめて、お前だけは側にいてくれ」
可哀想なミーム。哀れなリル。
高貴な人間には高貴な人間なりの苦労があるんだと、しみじみと感じた。
ムレに用意された部屋は、リルが居たのとは違う部屋だった。
つまり、王妃として認めた訳ではないということだ。
それでも、ムレは「私こそが次期王妃だ」と胸を張って王宮を闊歩していた。本当は、すでに始まった悪阻に物凄く苦しんでいたのに。
部屋を一歩でも出たら、額に脂汗をかいていても微笑みを絶やさない。
そういう、プライドを持って生きている人は凄いと思う。
ただ、ミームはムレの事が苦手なようだった。
「ミーム様、本日もご機嫌麗しゅう。私のお腹の子も、ルイーナ様同様可愛がってくださいませね。ミーム様の喜ばしき御子で御座いますもの」
何度も念を押され、どんどんミームはムレを見なくなっていった。
初めは一緒に取っていた夕食も、個々で取るようになった。
そして、いつしか、ミームは離宮と後宮にばかり入り浸るようになった。
他者の魔力に触れた日はリルに会いに離宮へ。
誰の魔力にも触れ合わなかった日とその翌日は後宮へ。
執務が忙しくてどちらにも移動できなかった日は、俺の部屋で寝る日々だ。
「何故なんですの。せっかく陛下のお子を授かったと言うのに、陛下のお渡りは遠のくばかり。一体、私の何が不満だと言うの……」
王の伴侶は腹に宿る子の魔力によって心力も増すと言われているにも関わらず、ムレは徐々に病んでいった。逆に、王宮から出されたにも拘わらず王と穏やかな日々を送れることになったリルは回復していった。
ミームも俺に触れない日が増えていった。
そして、ムレが産み月に入った二日後、リルの妊娠が発覚した。
さらにその後一週間の内に、リリシアとピスの妊娠も発覚した。
……おいミーム、お前ちょっと頑張りすぎだろ。もはや俺には、かけるべき言葉が何一つ無いのである。
「なぁ、メフィスレス、アイッシェン。俺、今日四歳になったと思うんだが、誰も祝ってくれないよ」
「三百年を超えて生きる我にとって、四年など瞬きの間よ。諦めよ」
「年を取ったからって、魔力がいきにゃり増える訳じゃにゃいにゃ。」
最近、なぜか頬っぺたではなく背中ばかりを舐めたがる召喚獣二匹にベタベタと舐められながら、俺は孤独な誕生日を満喫するのであった。

