うむ。なるほど。

ハイハイして冒険する俺にとって、階段は大きな壁だった。
が、ついに俺はつかまり立ちを覚えた。
実は今まではメフィスレスに口で(くわ)えてもらって階段を突破していたんだが、ようやく一人で階段を攻略しつつある。
奴が居ない時には同じ階しかうろつけなかったのが、これで自由に別の階へ行けるようになった。
これは俺の冒険にとっては、大いなる前進である。

俺には、メフィスレスに内緒でやりたいことが一つあるのだ。
それは――。
召喚魔法。

もう一度言うが、俺は犬より猫派だ。
メフィスレスも確かに気持ちの良いモフモフを持っているが、俺はネコの尻尾を掴んでスルッとしたいのだ。
根元を軽く触って、スルッと抜けていくあの尻尾の感触。あの感触をもう一度味わいたい。
バッサバッサと力強く振られるメフィスレスの尻尾では絶対に再現できない、あの至高(しこう)の感触をもう一度。

というわけで、俺が冒険先に選んだのは城の裏庭である。
前世のイメトレから言うと、召喚魔法は基本的にどこでも出来る。はず。
ミームの渡してきた魔道具は魔法の発動を助けるだけのモノなので、本来は必要ない。はず。

そして、大がかりな召喚陣なども必要ない。はず。
必要なのは、呼び出す魔力と、強い気持ちだけだ。きっと。

なので、メフィスレスが来ないであろうこの場所で、俺は召喚を試みるのだ。
猫型の何かを。

にゃ~ん、にゃ~ん、にゃんこちゃ~ん。俺と一緒にあそびましょ~。

もう一つ裏庭を選んだ理由は、万が一とんでもなくデカい奴が来ても良いようにと思ったからだ。
が、光と共にボフッと出てきたのは、メフィスレスと同様にちっちゃい奴だった。

『くぁ~、良く寝た。ん?おやおやぁ~?人間界じゃにゃ~か?おいら、いつの間に呼び出されたのかにゃ?ま、どうでもいいにゃ。お、おいらを呼んだのはおみゃ~さんか?赤ん坊じゃにゃ~か。でも、旨そうな魔力垂れ流してるにゃ。おぉ、おこぼれだけでもうみゃ~にゃ~。契約にゃ?おみゃ~さんと契約するのかにゃ?喜んで契約してやるにゃ。でも、おいらと契約するにゃらこの垂れ流し魔力の十倍は約束するんだにゃ。おいら、暴れ回るから体力大事だにゃ』

出てきたちっちゃい奴は、一度も喋りを止めることなく、俺の周りを凄まじいスピードでぐるぐる回った。
建物の屋根に飛び上ったり、木の上をせわしなく渡ったりしながら、たまに俺に鼻先を向けて、ずーっとぐるぐると回り続けた。そして、ひたすらノンストップで喋り続けた。
一通り気が済んだのか、そのちっちゃいのは俺の側へと寄ってきて、前足を俺の膝にちょこんと置いた。膝を押さえてグンと顔を近づけると、メフィスレスの時のように俺の顔を舐めようとして、そこでピタッと動きを止めた。