うむ。なるほど。

ユハは「泣くことも大切ですから、たまには泣いて下さいね」とか言っていた。
俺の問題行動の話は、ただの家族の感想で、文句ではなかったらしい。そして皆が居なくなったのは、俺に感情を表に出させるための作戦だったという。
驚いたことに、部屋の中にはずっと全員居たんだそうだ。
俺が必死に身体の向きを変えるのに合わせて、全員で音を立てずに大移動していたんだとよ。
くだらな過ぎる。くだらな過ぎるが、あの物凄く寂しかった気持ちは本物として胸に残った。

その日から、俺はすでにお座りができることに気付き、常に座るようになったのだが、後ろか脇には必ずメフィスレスが鎮座(ちんざ)するようになった。まだ俺の赤ん坊の筋力では、支えがないと倒れてしまうらしい。
特に、後ろを振り向こうとするとポテポテと倒れ放題だ。
そんな俺の無様(ぶざま)な姿が非常にお気に入りらしく、ユハがしょっちゅう俺の後ろに回るようになった。ええかげんにせぇよ。
リルとミームはハラハラとしていて、俺の周りはいつの間にか柔らかいタオルだらけだ。

始めは邪魔だなと思っていたが、このタオルがなかなかに触り心地が良い。メフィスレスの毛並みより気持ちいいかもしれない。気に入りました。
タオルを握ってモフモフしたり、振り回したりしていたら、手の力がついたと判断されたようで、食事中も自分でスプーンを持たせてもらえるようになった。有り難い。

ただ最初は、スプーンを持つだけで自分の口に入れることまでは出来なかった。
持ち手を変えてみても、赤ん坊の腕はなかなかに不自由だ。スプーンの繊細な向きを調節するのが非常に難しい。
スプーンで上手く掬えたとしても、口には入らず手前で零れたり、鼻に突っ込んだりしてしまう。なるほど。赤ん坊とは、なかなかに大変な生き物だ。
たまに、上手くいかな過ぎてイラっとしてスプーンを放り投げたりしたが、許して欲しい。

しばらくすると少しずつ自分で自分の口に入れられるようになって行った。
これでアーンからも解放される。
別に今までも、アーンされるのは別に苦ではなかったのだが、隣でミームがリルに「俺にもアーンして」と強請(ねだ)っているのが死ぬほど鬱陶しかったので、非常に喜ばしい。
俺が自分で食えばミームも大人しく自分で食うだろう。

……と思ったのだが、なんとミームは俺に向かって「アーンしてくれ」とせがんできた。どこまでどうしようもない王様なんだ。
致し方ないので、自分はスプーンを使って食べながら、ミームの口には魔法で食べ物を浮かせて、そのままダイレクトに突っ込んでやった。

それはそれで「俺の子は天才だ!」と騒いで五月蝿(うるさ)かったが、直接アーンするよりはマシだ。
リルがそれを羨ましそうに見ていたので、リルには普通にアーンしておいた。