一日中、今日は雨が降っていた。しとしとと降り続けた雨は、夕闇に染まるころになっても変わることなく道を濡らしている。
つぼみの軒先で凛音がピンク色の傘を広げると、すぐに雨を弾く音が響き始めた。ほかに生徒の姿はない。雪人と恵麻はスクーリング授業を受けに学校に向かったので、五時からの学習会の参加者が凛音だけになったのだ。
「じゃあねー、まきちゃん。おつかれさま」
「また明日。雨だから気をつけて帰れよ」
「駅までぴよちゃんが送ってくれるから大丈夫」
玄関まで見送りに来てくれた真木に頭を下げて、凛音に続く。今日は日和も歩きだ。
中学三年生になって、夜の学習会への参加を決めた凛音だが、ひとりで帰ることはまだ少し怖いのだという。だから、彼女がひとりになるときは、誰かしらが駅まで付き添うようにしていた。
真木は、いつかはひとりで帰らないといけないと言っていたが、まだもう少しは許されるだろう。それに、しばらくつぼみを休んでいたのだし。その判断で、日和はつぼみに居残ることなく、凛音と帰りをともにしていた。
つぼみのことや兄のことを話す凛音の声と、傘に当たる雨音とを聞きながら、最近はずっとこうだなと考える。
――先週は、実習明けなんだから早く帰れって追いやられたし。これからも凛音ちゃんを送るなら残れないし。
凛音を送ることが嫌なわけでは、もちろんないのだが。
あのスタッフルームで真木の仕事を手伝う時間が、日和は好きだった。けれど、それもめっきりと減ってしまっている。
去年に比べて、つぼみの雰囲気は少し変わった。生徒も多少なりとも入れ替わるし、スタッフも変わる。真木のオンとオフがはっきりとしていることは今に始まったことではないし、ボランティア活動中に特別に接してほしいとは思っていない。ただ。
――なんか、少しずつ俺の居場所がなくなってるみたいで、それが、ちょっと。
不満だとは死んでも言えないし、言う気もないけれど。このまま、あの人の中からあっさりと自分が消えてしまいそうで、たぶん、それが怖いのだ。
傘を打つ雨の音は、家に帰るまでずっと鳴りやむことはなかった。
つぼみの軒先で凛音がピンク色の傘を広げると、すぐに雨を弾く音が響き始めた。ほかに生徒の姿はない。雪人と恵麻はスクーリング授業を受けに学校に向かったので、五時からの学習会の参加者が凛音だけになったのだ。
「じゃあねー、まきちゃん。おつかれさま」
「また明日。雨だから気をつけて帰れよ」
「駅までぴよちゃんが送ってくれるから大丈夫」
玄関まで見送りに来てくれた真木に頭を下げて、凛音に続く。今日は日和も歩きだ。
中学三年生になって、夜の学習会への参加を決めた凛音だが、ひとりで帰ることはまだ少し怖いのだという。だから、彼女がひとりになるときは、誰かしらが駅まで付き添うようにしていた。
真木は、いつかはひとりで帰らないといけないと言っていたが、まだもう少しは許されるだろう。それに、しばらくつぼみを休んでいたのだし。その判断で、日和はつぼみに居残ることなく、凛音と帰りをともにしていた。
つぼみのことや兄のことを話す凛音の声と、傘に当たる雨音とを聞きながら、最近はずっとこうだなと考える。
――先週は、実習明けなんだから早く帰れって追いやられたし。これからも凛音ちゃんを送るなら残れないし。
凛音を送ることが嫌なわけでは、もちろんないのだが。
あのスタッフルームで真木の仕事を手伝う時間が、日和は好きだった。けれど、それもめっきりと減ってしまっている。
去年に比べて、つぼみの雰囲気は少し変わった。生徒も多少なりとも入れ替わるし、スタッフも変わる。真木のオンとオフがはっきりとしていることは今に始まったことではないし、ボランティア活動中に特別に接してほしいとは思っていない。ただ。
――なんか、少しずつ俺の居場所がなくなってるみたいで、それが、ちょっと。
不満だとは死んでも言えないし、言う気もないけれど。このまま、あの人の中からあっさりと自分が消えてしまいそうで、たぶん、それが怖いのだ。
傘を打つ雨の音は、家に帰るまでずっと鳴りやむことはなかった。



