あの夏、愛を教えてくれた君


翌朝目を覚ますと、砂浜で寝たはずの私は別荘の一室にいた。


「……明人?」


また走りに行ってるのかと思い、朝食を作って待つも、一時間二時間経っても明人は現れない。

残すのももったいないから、自分の分だけ食べて、あとはラップして袋に詰める。

スマホで時間を確認すると、六時半を回っていた。また早起きしたな。まあ、あんなに早く寝たら早く目が覚めるのも自然か。

そう思いながら私は仕方なく帰り支度を始める。というのも、スマホを開いた時に咲希から鬼のようにメッセージが届いていたのだ。

内容は、〈今日の野外学習は絶対行こうよ〉というものだった。プリントの写真を見ると、行先は戦争資料館らしい。

興味はないけれど、咲希に〈千夏がいないと楽しなぁい〉というメッセージが下から二番目にあり、いちばん最後はほぼ強制みたいな文だった。

強制、か。明人は本当にどこに行ったんだろう。

昨日みたいに、あっちに行ってまた帰ってきたら戻ってきてるかもしれないし、とりあえず学校に行こう。

その前にお風呂だ。結局二日入らずじまいで、汚いまま学校には行きたくないから。

電車に揺られて、歩いて、制服に着替えてからまた学校に向けて歩き出す。

ここ数日、ずっと歩いてばかりだな。私は。

学校に着くと、どうやらバスで移動らしく、ギリギリに着いた私をいつもの視線で見てくるクラスメイトたちと教師。

手を上げてくれてる咲希の隣に座る。


「来ないかと思ったよ」
「ほぼ強制なメッセージ送られてきたら、嫌でも来るしかないでしょ」
「嫌だったんじゃん。飴舐める?」
「ん」


結局、咲希とは祭りでは会えなかった。まあ、あの人数じゃ、会うほうが難しい。

バスが出発してから、すぐにバスの中は賑やかになった。

担任が、「遠足じゃないんだぞー」と注意はしていたけど、それでも賑やかさは静まらない。

私も私で、騒いでるわけではなくヘッドホンで音楽を聞いているだけだけど、何故か今まで苛々していたこの状況に苛々せず落ち着いている。

それが分かったのか、咲希も珍しそうにこっちを見ている。

しばらくして、目的地の戦争資料館に到着し、館員さんから説明を受けた後、自由行動となった。


「どこから見て回ろうか」
「そうだねー。……えっ?」
「うん?何かあった?」


どこから見て回ろうと話しながら来たのは、人の顔写真がずらりと並んだ場所だった。

"特攻隊"

そう書かれていることより、私が驚いたのは。


「明人……?」
「えっ?」


間違いない。明人だ。えっ、明人が……特攻?

特攻隊はお国のために小さな戦艦に乗って、体当たりしに行く部隊だとさっき説明を受けた。半分も聞いてなかったから、今の説明で合ってるかは分からないけど。


"君は、死にたいの?"
"す、ま、ほ?"
"こんびに……?"
"ずっと帰ってないかな"
"……好き、ではないかな"


明人の言葉が鮮明に脳裏を過ぎる。

昨日そばにいたのは紛れもない、明人だった。この写真に写っている明人だ。

明人が現代のことを何も知らなかったのも、納得がいってしまう。


顔写真の近くには、隊員たちが家族へ送った手紙が飾られている。

明人のを探すと、ちゃんと両親へ送っているものがあり、その手紙の横に「海」とだけ書かれたハガキサイズの紙が置かれていた。


「……ごめん、咲希。私、行かなきゃ」
「えっ?ちょ、千夏!?」