あの夏、愛を教えてくれた君


翌朝。いつの間に眠ってしまったのか、眩しさに一瞬目を開けてからゆっくりと体を起こす。

砂浜の上で寝るなんて、今後二度と味わうことはないもしれない。

スマホで時間を確認すると、朝の五時を少し過ぎた頃だった。


「おはよう」
「……おはよ。走ってきたの?」
「うん」


今が五時過ぎだから、それよりも前に起きたんだろう。私は今回、たまたまこの時間に起きれたけど、普段からこの時間に起きてないと起きることはまず不可能。

シャツの裾で汗を拭く明人を見て、私はふと思った。

お互い同じ服のままだと、次第に匂いが腐ってくると。

私は家に帰って取りに行くことができるけど、明人はどうなんだろう。


「ねぇ、明人」
「うん?」
「帰る場所は、あるの?」


勝手な想像だけど、明人と引替えにご家族が亡くなっていたら……いや、それでもスマホやコンビニの存在は知るはず。

明人はゆっくりと昇ってくる朝日を見つめながら、静かに、


「あるけど、もうずっと帰ってないかな」


と、言った。

これ以上踏み込むのは野暮というもの。私は一言、「そっか」とだけ返す。

事情があって帰れないのか、少なくとも、私みたいな不良とは少し違うようだ。

我が家には、家の鍵が四本ある。三人の帰る時間がバラバラなため、一人一つずつとポストの内側に一つ。当時は、なんでそんな分かりやすいところに貼るのか分からなかったし、不用心と思ったけれど、案外見つからないみたい。

誰かが家に入る時に、鍵が見当たらなかった時用にと母がポスト裏に付けていた。

そして私は今、家の鍵を持っていない。学校のカバンに入れているからだ。

学校も終業式までまだ日があるけど、残り二、三日。それくらい休んだって、バチは当たらないはずだ。

それでも一応、咲希には休むという連絡を入れておく。終業式も出ないということを。

六時半には両親が仕事に出るだろうから、その時に必要なものを取りに行こう。

問題は、明人の服だ。

あと、これから寝泊まりする場所も必要になる。……って、どうして明人と一緒の前提で考えてるんだろ、私。

それから、またもや会話という会話はなく、私はコンビニで朝食を買っては明人に渡した。

一口食べて美味しかったのか、すごい勢いでおにぎりを間食した明人は、余分に買っておいたサンドイッチもあっという間に完食した。


「けほっ……げほっ……!」
「ちょ…、大丈夫?」


人が一気に食べれる量には限りがある。飲み物も飲まずに一気に食べたら、それは詰まるに決まってる。

それなのに一気に食べてむせた明人が、なんだか。


「ふっ……ふふ」


その光景が面白くて、つい笑ってしまう。


「なんで笑うの」
「……さあ、一旦帰ろうかな」
「話逸らさないでよ」


ちょっと癪だけど、明人の今日の分の服だけ、父のを借りよう。身長は変わらないと思うから、ちょうどいいはずだ。

下着は……うん、新しいのを買ってあげよう。