「親父はね、ずっと心臓を悪くしていて、本当は店を開けられるような状態じゃなかったんだ。僕たちが『もう店を畳んで入院してくれ』って何度も頼んだ。でも親父は聞かなかった。『あそこに明かりを点けて店を開けておけば、話し相手になってくれる人が誰かしら来てくれるから』って……昔から、親父は人との出会いを大切にする人だったから。無理して、店に立ち続けてたんだよ」
息が詰まり、胸が潰れそうだった。
確かに、おじさんはあの時も言っていた。
久しぶりにこの家で人と話せて嬉しいって。
だけど、おじさんがこんなに深刻な状態だったとは思いもしなかった。
ただ、寂しかったんだな、くらいにしか、思わなかったのに……。
私たち……本当に周りが何も見えていないんだ……。
通された病室のベッドで、おじさんは無数の管とピピピと一定音を刻むモニターに繋がれ、小さく横たわっていた。
「おじさん!」と声をかけても、返事はない。
あんなに大きくて温かかった手には点滴が刺さり、規則的な人工呼吸器の音だけが虚しく響いている。
自力で起き上がることも、私たちの報告を聞いてあの時のように笑ってくれることもない。
なんで……なんで、あの日、何も言ってくれなかったの?
初対面の私たちの悩みだけ聞いて、笑って優しく包み込んでくれて。
おじさんの言葉に救われたのに、私たちは……。
私たちは、おじさんの抱える問題に全く気づかず、戻ってしまったんだ……。
『第2の家だと思って、いつでも来なさい』って、あの時、言ってくれたのに……。
その言葉を思い出した後に、ハッとした。
『たまに、おじさんのことを思い出してくれたら』って……。
その言葉に、いろんな意味が込められていたんだって、今になってわかってしまった。
今さら……。
