「あら、お二人、そこのおじちゃんに用かい?」
「あ、はい。ちょっと、挨拶がしたくて……。臨時休業って書いてあるけど、奥の家にはいますかね?」
律が松葉杖の向きをおばさんに向け尋ねると、おばさんは私たちに近づいてきて深刻な表情で言った。
「……あのおじちゃんね、先週急に救急車で運ばれたのよ。昔から心臓が悪かったんだけどねぇ。もう……店には戻ってこられないかもしれないって。ほら、ずっと一人だったでしょう?自分で救急車を呼んだみたいなんだけど、それがちょっと遅かったみたいね」
頭の中の音が、すべて消えた。
嘘……でしょ。
心臓が悪かったの?
そんなの、全然知らなかった……。
もう、戻って来れないかもって、そんな……。
「どこの病院ですか?」
律が顔を青ざめておばさんに聞く。
「ここには大きな病院がないから、鹿児島市内の市立病院にうつったみたいよ」
私たちは来た道をまた戻り、教えてもらった市内の病院へと走った。
無機質な消毒液の匂いが鼻をつく病室の廊下。
松葉杖を必死に突いて足早に廊下を進む律に、私も急いでついていく。
病室の前に着くと、そこには私たちが知らない二人の大人の男性が廊下の椅子に腰掛けていた。
慌ただしい私たちの足音に気が付き、その男性二人が静かに椅子から立ち上がる。
そして、私たちに向かって、小さく頭を下げてきた。
どことなく、おじさんに似ている顔立ち。
あの時おじさんが話してくれた、息子さん達だと思った。
