あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


オーディションから明けた週末、久しぶりに部活が休みだったので、私と律は再び霧島へ向かう電車に揺られていた。

車窓の向こうには、夏の力強い日差しを浴びて青々と言い放つ木々と、遠く輝く錦江湾。
そして、その向こうにドスンと佇む雄大な桜島のシルエット。
鹿児島特有の、蒸しっとした潮風が肌にまとわりつく。
だけど、あの雨の日の逃避行とは違っていた。
私たちの胸には「九州大会のオーディションに受かった」という誇らしさと、あの温かい駄菓子屋のおじさんに真っ直ぐ感謝を伝えたいという、熱があった。

ガタゴトと揺れるローカル線を降り、あの懐かしい霧島の坂道を登っていく。
あの日、ずぶ濡れで冷え切った私たちに熱いお茶を出して泊めてくれた、あの古びた駄菓子屋。

けれど――お店の前に立った瞬間、私の足がぴたりと止まった。

錆びついた金属のシャッターが重々しく下りている。
そこには歪んだ字で『臨時休業』とだけ書かれた紙が、夏の風に虚しく揺れていた。

「……臨時休業?」

律が呟く。
二人で呆然と立ち尽くしていると、隣の家のおばさんが出てきて、驚いた眼差しを私たちに向けた。