あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


これが、私の音だーー…!

ふと目に入った顧問の先生は、楽譜を握りしめたままフリーズしていた。
部員たちの誰もが息すら忘れて固まり、松下さんですら、胸を力任せに抉られたような顔で私を見つめて立ち尽くしていた。

うまいかどうかなんて、わからない。
正確さなんてどうでもいい。
泥だらけになってもがいてきた中で見つけた「私の音」。

最後の音が余韻となって溶けていく。
私はトランペットを膝に下ろし、肩を激しく上下させた。
溢れ出る涙に、ハッとする。
私、いつの間に泣いてた?
トランペットを吹きながら、頭に思い浮かんだのは、律と逃げ回った光景だった。
あの使い捨てカメラでシャッターを切った瞬間の、一つ一つだった……。

静寂。
耳が痛くなるほどの沈黙のあと――

顧問の先生が、深く、深く溜息をついた。

「……松下の演奏は完璧だ。だが白波……お前の音には、広いホールの端まで届き、聴く者の人生を揺さぶる物語がある。……九州大会のメンバーは、白波あおば」

静寂が弾け、歓声が爆発した。
松下さんがボロボロと涙を流しながら走り寄ってきて、私の手をきゅっと力強く握りしめてくれた。