「こんばんは、おばさん。これ、母さんが作ったスイカです。小ぶりだけど、今年は一番甘くできたって喜んでました」
「いつも本当にありがとうね、律くん。あおば、お皿に分けてあげるから部屋で一緒に食べなさい」
2階にある私の部屋に入ると、律はまるで自分の部屋のように、勉強机の椅子に背もたれを前にして跨るように座った。
いつもならベッドにドサッと寝転がるのに、今日は珍しい……。
私はローテーブルの前のカーペットに座り、お皿に並んだスイカを見つめる。
「おまえさ、さっき絶対夕飯まともに食ってないだろ」
「な、なんでわかるのよ、見てもいないくせに」
「あのなぁ、何年幼馴染やってると思ってんだよ。お前の性格上、こんな大事な時期に部活を途中から抜け出したら、その罪悪感で、何も食えなくなるってわかってんだよ」
「………」
何でもお見通しの律に、何も反論できなかった。
食べてないのをわかっていて、スイカをわざわざ持ってきてくれたんだね。
「ほら、早く食べたなくと、ぬるくなるぞー」
律は、三角にカットされたスイカを一つ、私に持たせてくれた。
一口頬張ると、驚くほど冷たくて、目の醒めるような甘さが広がった。
「冷たい……! それに、すっごく甘いし、美味しい!」
「だろ?俺がキンキンに冷やしてやったんだから、感謝しろよな」
「えー?おばさんが育てたスイカを、おばさんがカットして、おばさんが冷やしてくれたんじゃないの?」
「うっせーな!最終的に俺が持ってきてやったんだから、俺がやったのと同じだろ」
律は勢いよく椅子から立ち上がると、私と同じようにカーペットの上に座ってスイカを一つ手に取った。
「でもさ、これおばさんの趣味で終わらせるの勿体無いよね。もう、売り物だもん、この甘さ」
「それ母さんに直接言ってやって。泣いて喜ぶと思うわ」
お互いにティッシュの上にスイカの種をププッと吐き出しながら、笑い合う。
いつもと変わらない、他愛のない夜のひととき。
けれど、昼間、部活を途中で投げ出して帰ってきたという事実が、じわじわと冷たい鉛になって、私の胃をきりきりと締め付けていた。
あの後も、空が暗くなるまでみんなは練習していたはず。
サボってしまったという罪悪感が、心臓を冷たく濡らしていく。
