あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


『パシャッ』

小さなフラッシュとシャッター音が、二人だけの空間を切り取った。

「……お前さ」

律が静かに口を開いた。
一歩、また一歩と距離を詰め、私の目の前で足を止める。

「オーディション、絶対に受かれよ」
「……うん」
「九州大会に行って……お前が死ぬほど吹きたかった音色、九州全域に聴かせてやれ。んで、俺のとこまで、飛ばしてこい」
「うん。約束、する」

私が静かに微笑むと、律はハッとしたように目をあちらこちらに泳がせ始めた。

まだ、言葉にはしない。
好きだとも、付き合おうとも言わない。
だけど、触れそうな距離にある呼吸と、カメラのレンズ越しに交わした視線の中に、言葉以上の熱量が溢れ返っていた。
現像するまでどんな表情をしているか分からないこのカメラみたいに、私達の関係の答え合わせも、まだ少し先。

だけど、このもどかしくて狂おしい距離感こそが、今の私達のすべてだった。