あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


言葉の続きは、喉の奥に引っかかったように消えた。
律は悔しそうに顔を歪めると、伸ばしかけた手をそのまま自分の前髪へ持っていき、ぐしゃぐしゃと掻きむしった。

「……クソ、何言いたいのか分かんなくなってきた」

背を向けて、バツの悪そうに窓枠へ肘をつく律。
その横顔の耳根っこは、夕焼けの赤よりもずっと赤く染まっていた。

律は……私のこと、どう、思ってるの?

喉まで出かかった問いかけは、あまりの怖さと愛おしさに詰まって出てこない。
もし言葉にしてしまったら、今までの「ただの幼馴染」には二度と戻れなくなる。
その一歩を踏み出す勇気がなくて、私はただ、熱を持った手首を自分の反対の手で静かに包み込んだ。

「……あ」

その時、カバンのポケットに入っていたものを思い出した。
私は胸の焦ったさを隠すように、そっと「それ」を取り出す。

ジー、ジー……。

静かな空き教室に、乾いたプラスチック音が響く。

律がハッとして振り返った。

「……何撮ろうとしてんだよ」
「ほら、霧島で撮った写真は『逃げ出した私達』だったでしょ?でもこれは……『ここで戦う私達』の記録。……撮らせてよ、今の律」

震える手でレンズを向けると、律は「……ふざけんなよ」とボソッと呟いた。
けれど、絶対に目を逸らそうとはしなかった。
夕空のオレンジ色を反射させた真っ直ぐな瞳で、まっすぐに私を見つめ返してくる。