あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


「距離が近すぎんだろ……!俺、言ったよな。あいつにあんな顔すんなって」
「あんな顔って……私は、ただ、びっくりして――」

そこまで言って、私は息を詰めた。
律の表情が、いつもみたいに「怒っている幼馴染」の顔じゃなかったから。

ぎゅっと結ばれた唇。
眉間に寄せられた苛立ち。
そして、今にも泣き出しそうなほど切なく歪んだ視線。

律……?
なんで……そんな顔するの?

胸が、痛いくらいにドクドクと拍動を早める。
霧島のあの夜、暗闇の中で触れ合った肩の熱さ。
雨の音の中で二人だけで分け合った息遣い。
「幼馴染だから」「昔から一緒にいるから」――そうやって自分の心に張り付けてきたラベルが、音を立てて剥がれていくようだった。

律は私に一歩近づいた。
松葉杖の乾いた音が床に響く。
差し出された律の手が、私の頬のすぐ近くでピタリと止まった。
触れたいのに、触れてはいけないみたいに、長い指先が微かに震えている。

「……お前、自分のことになると本当バカだな」

律の声が、掠れていた。

「俺がどんだけ……お前のこと……」