あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


「……行くぞ」

律は低く呟くと、机の上の教科書やノートを乱暴に鞄に詰め込み、私の手首を掴んだ。

「え、ちょっと律!?まだ宿題が――。それに、あ、足!」
「いいから」

律は松葉杖を手に持ち、それを使うことなく足を引きずったまま、私の手首を掴んだ。
そして、先輩から逃げるようにして、図書室を飛び出した。

足早に辿り着いたのは、あの、誰も来ない旧校舎にある空き教室だった。
軋むドアを閉めると、蝉の時雨と、埃っぽい西日だけが部屋を満たしていた。

律は掴んでいた私の手をパッと離すと、ようやく松葉杖を使って窓際に歩み寄り、背中を向けたまま荒い息を吐いた。
掴まれていた手首に、まだ律の体温の残像がしびれるように残っている。

「……何なんだよ、あいつ」

ポツリと漏れた声は、怒りというより、どこか悲しそうに揺れていた。

「神崎先輩のこと……?ただ宿題教えてくれようとしてただけで――」
「そうじゃねえよ!」

律が振り返った。
夕陽を背負ったその顔は、耳まで真っ赤で、だけど瞳だけが私を射抜くように強く見つめていた。