あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


「うん。……律に見せるためにも、私、絶対に九州大会の枠、勝ち取ってくるから」

夕空の下で交わした静かな約束。
それが、私の死に物狂いの練習を支える一番の原動力になっていた。

オーディションの練習と並行して、私達には「夏休みの宿題」という現実的な壁が立ちはだかっていた。

「補習で練習出られなくなったら意味ねえだろ」という律の言葉で、部活開始までの時間を、私達は図書室で一緒に課題を終わらせることにしたんだ。

静まり返った館内。
木漏れ日が差し込む窓際の席で、私と律は向かい合ってノートを開いていた。

「あおば、お前全然やってねぇじゃん」
「いや、そういう律こそノート真っ白なんですけど」
「マジかよ……。あおばのノート写そうと思ってたのに」
「ねぇ、私たち協力して終わらせようにも、絶対夏休み中に終わらないよね。部活だってあるのに」

私が言うと、律は大きなため息を吐いた。
だけどすぐに、シャーペンを握って課題に取り組もうとしている。

「気が遠くなるけど、親父たちとも約束したしな。やるしかないな」

そして、諦めたように口角を上げる。

とりあえず、できるところから終わらせようと、真剣にシャーペンを動かし出した私たちだけど……。

「あおば、ここ計算間違えてない?そんな答えになる?」
「え?どこ?」
「ほら、ここだよ」
「えー?計算式、こうじゃなかったっけ?てゆーか、律、これが間違ってるってわかるの?珍しい」
「わかる……わけ、では、ない」
「何よ、それー!!」

文句を言いながらも、二人で教え合う時間は、霧島への逃避行を経て少しだけ大人になった私達にとって、どこか特別で愛おしい時間だった。

「……へー。仲良く勉強会?」

低く甘い声が頭上から降ってきた。

ハッとして見上げると、そこには本を数冊抱えた神崎先輩が立っていた。