その日の夜。
自宅で夕食を済ませた私は、何も書けずにいる白紙の進路希望用紙を、自室で見つめていた。
高校2年生。
正直、夢なんてない。
行きたい大学もない。
そもそも、進学するべきか、就職するべきか、そんなこともわからない。
目の前のことすらうまくできないのに、将来のことなんて考えられるわけがないじゃん。
今の私には、その未来を選ぶ資格も実力もないよ……。
大きなため息を吐き、目を強く閉じて項垂れたその時、玄関のチャイムが「ピンポーン」と静かに鳴った。
キッチンから、「あおば、出てー!」とお母さんが叫ぶ。
階段を下りて玄関の鍵を開けると、そこに立っていたのは、少し濡れた髪を無造作に遊ばせた律だった。
きっと、お風呂上がりだろう。
白いTシャツに黒いハーフパンツという、極めてラフな格好。
律の手には、カットされた真っ赤なスイカがぎっしり詰まった銀色のボウルが、大事そうに抱えられている。
「あおば、これ、うちの母さんから。今年の出来栄え、かなりいいらしいぞ。冷たいうちに食おうぜ」
律は、人懐っこい笑みを浮かべてボウルを差し出してきた。
律のお母さんは趣味で野菜や果物を育てていて、それを収穫したら必ず私たちに分けてくれるんだ。
私もまた、お母さんが多めに作ったおかずなどを、律の家に時々届けている。
「あら、律くん。いらっしゃい」
お母さんがリビングから顔を出した。
