「立ち止まったから……自分が本当に大切にしたいものが分かったの。だからもう自分を責めないよ。私の足で、もう一回やり直してくる」
「うん……。お母さん、応援する。今しかできないことってあるからね……。お母さんの10代の頃にも同じようなことがあったのに、いつの間にか、そんな大切な思いを忘れてしまってた。進路のことも、追い詰めてごめんね。これからは、あおばのタイミングで進んでいけばいいから」
生まれて初めてぶつけた本音。
今までずっと本音を言うことは悪いことだと思っていた。
話しても、どうせ否定されるだけだって。
だけど、違ってた。
こうやって素直に話したら、きちんと理解してもらえるんだってわかって、今ではすごくスッキリしている。
「ありがとう、お母さん……」
親子で抱き合って流した涙は、私達の間にあった冷たい壁を温かく溶かしていった。
それから、私と律の「本当の戦い」が始まった。
律はギプスをはめた足で毎日リハビリに通い、松葉杖をついてグラウンドへ向かった。
ポジションを奪われた焦りも、かっこ悪い姿も全部さらけ出し、声が枯れるまで仲間に声を張り続けていた。
私も家に戻ってからすぐに、吹奏楽部は県大会でゴールド金賞を取り、九州大会進出が決まったことを知り、自分の中でトランペットへの欲が爆発した。
「もう一度、あのステージで私の音を響かせたい」
胸を刺すような渇望を抱えて、私は夕暮れの音楽室の扉を開けた。
部員全員の刺さるような視線の中、私はみんなの真正面に立ち、深く、深く頭を下げた。
「みんな……本当に、ごめんなさい……!ずっと松下さんに嫉妬して、負けるのが怖くて逃げ出しました。でも、こうやって立ち止まって気づいたんです。誰かを叩きのめすためじゃない、私自身の音で、みんなと音楽がしたかったんだって!」
涙でぐしゃぐしゃの顔で、私は顧問の先生に向かって叫ぶように頭を下げた。
