あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


翌朝。

目が覚めると、昨夜の猛烈な雨が嘘だったかのように、世界はどこまでも澄み切った青空に包まれていた。
雨上がりの濡れた木々が夏の光を反射してキラキラと輝き、空気は驚くほど澄み渡っている。

私達はおじさんにお礼を言い、軽自動車で駅まで送ってもらった。
電光掲示板の『運転見合わせ』の赤文字は消え、緑色の『平常運転』の文字が誇らしげに点滅している。
現実へと繋がる線路が、どこまでもまっすぐに伸びていた。

「いいかい、二人とも」

改札の前で、おじさんが私達の顔を交互に見つめ、温かく目元を緩めた。

「ここから帰ったら、きっと二人を待ってる現実は甘かない。親御さんもご立腹だろうし、散々怒られるだろうさ」

おじさんは律のギプスと、私の手元にある使い捨てカメラに視線をやり、いたずらっぽく笑った。

「でもね、勇気を持ってここまで来た今の二人なら、もう大丈夫だと思うよ。大事なのは、どれだけ自分の思いを伝えられるかどうか。胸を張って、自分の言葉でぶつかってきなさい」

おじさんのその言葉を聞いた瞬間、胸の奥にずっと溜まっていたモヤが、すうっと晴れていくのが分かった。

「帰ってから、たまーにおじさんのことを思い出してくれたら、少し嬉しいかな?」

おじさんが私たちに向かってお茶目にウインクをする。

「もちろんです。昨日は、突然だったのに、泊めていただいてありがとうございました」

私はお礼を言い、律と一緒に頭を下げた。

「おじさん、また、来てもいいですか?」

私が尋ねると、おじさんは「第2の家だと思って、いつでも来なさい」と優しく微笑んでくれた。