あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


「……電源入れたらさ、一気に現実が降ってくるのが分かってるから。親父の怒鳴り声も、部活のみんなの視線も……。俺、まだそれを受け止める覚悟ができてないんだ。情けないよな」

律は自嘲気味に笑った。
逃げ出したい恐怖と、この静寂の中に留まりたい願いの狭間で、胸を押し潰されそうになりながら耐えている。
その苦しげな横顔が、切ないほど愛おしかった。

「ううん、情けなくなんてないよ。明日になれば怒られるかもしれないけど……今夜くらいは、何も考えなくてもいいと思う」

私が言うと、律は少しだけ救われたような顔をして、畳の上に置かれていた使い捨てカメラに手を伸ばした。

「……じゃあさ。写真撮ろう」

ノブを『ジーッ、ジーッ』と巻き上げる。
乾いた歯車の音が、二人の間に心地よく響く。

「え、また?今日はもう十分撮ったじゃん」
「だってほら、俺らまだ二人で一緒に写真撮ったことないだろ?」

律がニッと綺麗な歯を見せて笑う。

「せっかく霧島まで来たんだし、普段撮らないような写真撮ろうぜ」
「そうだけど、今この部屋に霧島っぽいところないんですけど。どうせなら霧島神宮で撮ればよかったのに」
「ハハハ、確かに。でも、それでいいんだって。誰もこの写真が霧島で撮られたんだって分からなくても、俺らがわかるんだから。それだけで十分」

律のその優しい微笑みに、じんわりと温かく鼓動が動き出した。
私たちにしか分からない写真。
特別な、写真。

「ほら、あおば、もっとこっちきて。写真撮れないだろ」