あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


「……あおばの方が、死にそうな顔してんな。なに? またあの鬼顧問に絞られた?」

律の視線が、私の赤い目元と、床に置かれた重い楽器ケースへと移動した。
その瞳の奥には、私をからかうような光はなく、静かで、どこか自分と同じ「重荷」を背負った者を見るような色があった。

「……うるさいな。別になんでもないって」
「なんでもない、の顔には見えないけど?」
「なんでもないって。それより、あんま喋ると身体の水分がなくなって本当にミイラになっちゃうよ」

私が少し強がって言い返すと、律は大袈裟に両手で喉を押さえて苦しみ出した。

「そうだった……忘れてた……。み、水を……お恵みください……」

ゾンビのように這い寄る手を伸ばしてくる律。
私はクスッと笑いながら、その手から逃げるように立ち上がった。

「忘れるくらいなら、まだまだ大丈夫そうだね」

律も軽く笑って、私と同じように立ち上がった。
二人で錆びた窓辺に並び、下方のグラウンドを見下ろす。
そこでは、陸上部や野球部、そして律のいるサッカー部の部員たちが、照りつける太陽の下で大声を張り上げて走っていた。
土煙が風に舞い、桜島の灰と混ざり合って、視界のすべてがセピア色に霞んでいる。

「なぁ、あおば。もうこのまま、サボっちゃおうぜ」