「律、これヤバくない……!?」
「雨……降ってくるぞ!」
ポツリ、と大粒の雨が頬に当たったのを合図に、バケツをひっくり返したような猛烈なゲリラ豪雨が降り注いだ。
夏の天気は全く予想できないところが、好きじゃない。
さっきまで雲ひとつないカンカン照りだったのに、突然真っ黒な雲に覆い尽くされるなんて。
周りの人々も傘なんて持っている人はおらず、みんな慌てて色々な場所で雨宿りをしていた。
「律、走れないでしょ!こっち!」
「悪い、あおば!濡れる、急ごう!」
松葉杖をついて必死に歩を進める律の服の袖を私が引っ張り、二人して濡れ鼠になりながらバス停へ走った。
間一髪で滑り込んできたバスに乗り込み、なんとか駅まで戻ったものの、無情にも駅の電光掲示板は『大雨による全線運転見合わせ』を告げていた。
「嘘でしょ……帰れないじゃん」
駅のベンチでため息をつく私。
律もタオルで前髪をぐしゃぐしゃと拭いながらスマホを見たけど、電源を切っている画面は真っ暗なまま。
電源を起こせばいいのに、律は決してそれをしなかった。
濡れた髪から滴が落ち、どこか捨てられた子犬のような瞳で画面を見つめる律の横顔に、私は胸をキュッと締め付けられた。
途方に暮れていたその時、駅のロータリーに一台の古い軽自動車が滑り込んできた。
プップー!とクラクションが鳴り、さっきの駄菓子屋の店主が顔を覗かせる。
「やっぱり、いた。探しに来てよかったよ。お兄ちゃん、その足で雨宿りは厳しいだろ!いいから乗りな!」
