あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


私達は社殿の前に立ち、静かに賽銭を投げ入れ、深く頭を下げた。

パンパン、と打ち鳴らした柏手の音が、深い森へと吸い込まれていく。

私は目を閉じ、心を研ぎ澄ませた。

……どうか、逃げ出した私たちのことを、バチが当たると笑わないでください。
もう少しだけ、この人と一緒に立ち止まる強さをください。

吹奏楽部でコンクール前に挫折し、オーディションに落ちて、そして、コンクール本番を途中で投げ出してしまった罪悪感。
周囲の期待に応えられず、壊れてしまった自分。
だけど、ここで足を止めたことで、私は初めて自分の本当の苦しみに息を吐くことができていた。

隣で目を閉じている律の横顔を見る。
律もまた、静かに祈っていた。
何をお願いしているんだろう。
律の横顔はいつだって凛としていて、私の胸をときめかせてくれる。

私達はお互いに言葉にはしない。
だけど、この神聖な場所で並んで祈った瞬間、私の中で確信に変わった。
学校や親、世間から見れば、私達のしていることは身勝手で不誠実な「サボり」かもしれない。
けれど、止まることすら許されず擦り減っていく高校2年生の夏、自分の足で立ち止まり、傷ついた心に呼吸をさせてあげるこの時間は、人生の中で間違いなく「世界でいちばん綺麗な選択」だったのだと。

散策を続けていると、ふと風が生温かく湿った気配へと変わった。
見上げると、墨汁をこぼしたような黒い雲が空を覆い尽くそうとしていた。