バスに揺られて辿り着いた霧島神宮は、鳥居をくぐった瞬間に空気が一変した。
杉の巨木たちが天を突くようにそびえ立つ参道は、下界の猛暑を嘘のように忘れさせる深い静寂と冷涼な気に満ちている。
律の松葉杖の音に気を配りながらゆっくりと石畳を進み、階段を登り切った先――私達の視界に飛び込んできたのは、息をのむほど壮麗な朱塗りの社殿だった。
「国宝」にも指定されたその社殿は、鬱蒼とした深い森の緑を背にして、鮮やかな朱と絢爛たる金箔の装飾、そして精緻な彫刻が強烈な対比を描いている。
まるで、緑の海の中に突如現れた竜宮城みたい。
悠久の時を生き存えてきた圧倒的な神威を漂わせていた。
「ねえ、律。こっち向いて」
私は受け取っていたカメラを構えた。
国宝の荘厳な朱塗りを背景に、松葉杖をついて、汗ばんだ前髪を気にする律。
『ジーッ、ジーッ……カシャッ!』
「お前さ、勝手に撮るなって言っただろ?それに、国宝の前で撮るのが俺のダサい姿かよ」
「いいの。今の律、すっごくいい顔してる」
私は笑いながら、今度は社殿の壮麗な装飾や、巨木の隙間から射し込む光を数枚撮った。
