あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


あてもなく歩いた私達は、色褪せた青い日よけテントが揺れる、こぢんまりとした古い駄菓子屋を見つけた。

ガラスの引き戸を引くと、首を振る扇風機がカタカタと音を立て、昭和の香りが広がる。
どこか懐かしさを感じ、「なんかすごいね」と、律と目を見合わせてゆっくり店内を歩く。

私達は氷水が入った赤いクーラーボックスからキンキンに冷えた瓶のラムネを取り出し、レジへ向かった。
レジの周りにも、たくさんの駄菓子や小さなおもちゃが所狭しと並んでいる。
その奥に、うちわで顔をゆっくり仰ぎ、小さなテレビを見ている店主であろうおじさんが座っていた。

「ああ、決まったかい?外は暑いからねぇ。ラムネ、よく売れるよ……あんたたち、旅行かい?」

店主が、律の松葉杖に目をやりながらふと尋ねてきた。
私達が目を泳がせながら曖昧に返事をすると、店主はふふっと目元を緩めた。

「そうかいそうかい。まあ、ただラムネを飲みたい日もあるわな。……お兄ちゃん、その足じゃ無理もしちゃダメだよ」
「あ、はい」

律が小さく頭を下げる。

「これから、どこに行くんだい?」
「あ、霧島神宮に行ってこようと思ってます」
「その足でかい?階段もあって砂利もたくさんあるのに」

おじさんに言われ、私たちはお互い目を見合わせ苦笑する。

「でもまぁ……一度止まってみないと見えない景色もあるからねぇ」

まるで全てを察しているかのような言葉。
それも仕方ない。
片方は松葉杖、そしてもう片方は制服のままだ。
それに、この辺じゃ見ない制服だってこともわかってるはず。
絶対に観光客ではないし、何か理由があって来たんだと、誰でも思うはずだ。

私たちはそれ以上、おじさんに答えることもせず、お店を出て、瓶のラムネの蓋を開けた。
ポンッ、と音を立ててビー玉を押し込むと、炭酸の飛沫と一緒に、少しだけ胸のつかえが取れた気がした。