あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


けれど、今日の桜島はあまりにも眩しすぎて、直視するのが怖かった。
あんなに雄大で、変わらないものを見せつけられると、自分の小ささと挫折の惨めさが際立ってしまうから。

「……相変わらず、綺麗だな」

律がぼそりと呟いた。
車窓に映る律の瞳にも、青い海と桜島の影が落ちている。

「あおば。霧島神宮、どんなところだろうな。行ったことないだろ?」
「うん、初めて」

律の問いかけに短く答え、私はポケットの中で静かに電源の落ちたスマホに触れた。
バッテリー残量、3%。
さっき暗転した画面は、もう外界との繋がりを何一つ映し出さない。
親からの連絡も、学校からの捜索も、届かない。

「もう気にすんなよ」

スマホを気にする私に、律が静かに言った。

「どうせ、逃げてきたんだ。だったらとことん逃げてやろうぜ。ちょうどいいじゃん、充電ないの。俺も、さっき電源切ったし」

そう言って、無邪気に笑う律が、自分の真っ暗なスマホの画面を私に見せてくる。

「今まで全力でやってきたんだ。逃げる時だって、全力でいいだろ」
「……うん」

私は頷くと、車窓の先……徐々に海から離れ、深緑の山あいへと差し掛かっていく線路の先を見つめた。