その一言で、私の胸の奥で張っていた糸がぷつりと切れた。
市電が大きく揺れる中、私は唇を噛み締め、溢れる涙を必死に耐えることしかできなかった。
やがて市電を降り、私たちは吸い寄せられるように鹿児島駅へと向かった。
そこで、ようやく、律にスポーツ飲料を買うことができた。
「サンキュー」と微笑む律に、私はそのペットボトルを差し出す。
「電車に乗ってからでいいよ。両手松葉杖じゃ、飲みにくいし……それより、あおば。俺たち、これからどこ行く?」
鹿児島駅の切符売り場。
券売機の上に飾られた路線図を見上げながら、律がポケットから小銭入れを取り出した。
全治一ヶ月の足で踏ん張りながら、財布の中身を確認する律の横顔は真剣そのものだ。
千円札が数枚と、ジャラジャラとした小銭。
それが今の彼の「全財産」だった。
「どこでもいい……。誰も私たちのこと知らないところ、遠くに行きたい」
私が掠れた声で答えると、律は路線図を指でなぞり、一番端にある、でも名前だけは聞いたことがある駅名をじっと見つめた。
「じゃあ……霧島の方、行ってみるか。山の中なら、きっと静かだし」
「……うん」
律が券売機にお札を投入し、硬いボタンを押す。
吐き出された二枚の小さな紙の切符。
そこには『霧島神宮』という文字と金額が印字されていた。
その小さな紙切れを持った瞬間、私たちはもう後戻りできない現実の境界線を踏み越えたのだと実感した。
自動改札を抜け、ホームに滑り込んできた日豊本線の普通列車に乗り込んだ。
