冷房の冷気が、滝のように流れていた汗と湿った肌の熱をじわじわと奪っていく。
ロングシートに二人並んで腰掛けると、律は短く息を吐き、痛む右足の太ももをそっと手で押さえた。
深く刻まれた眉間のシワ。
大丈夫なわけないよね。
足首の怪我を抱えた、律の不器用な限界がそこにはあった。
それでも律は私の隣に座り、何も言わずにただ静かに寄り添ってくれている。
窓の外を流れていくのは、見慣れた鹿児島の街並みだ。
緑の芝生が美しく敷き詰められた軌道敷の上を、市電はノロノロと走っていく。日傘をさして横断歩道を渡る人、かき氷の看板を出した喫茶店、変わらない日常を過ごす人々。
ガラス一枚を隔てた向こう側の世界が、急に遠く感じられた。
自分だけが世界から取り残されたような敗北感。
ステージに立てなかった惨めさ。
松下さんの澄んだトランペットの音が、鼓膜の奥で嫌にリフレインする。
指の皮が剥げるまで練習した日々も、唇を腫らして血の味がした時間も、全部全部、無駄だったんだ。
私には才能も、結果も、何一つ残らなかった。
残ったのは、こんなにも私を想ってくれる大切な人に無理をさせている、最低で不甲斐ない自分だけ。
悔しくて、情けなくて、膝の上で握りしめた拳がガタガタと震えた。
「あおば」
隣から、ポンと優しく頭に手が乗せられた。
律の大きな手が、乱れた私の髪を優しく撫でる。
「……一人で抱え込むなよ」
