自嘲気みに歪んだその笑顔の裏に、どれほどの激痛と忍耐があっただろう。
自分が不甲斐ないせいで。
私がオーディションに落ちて、惨めに逃げ出すような奴だから、律にこんな無理をさせてしまった。
心配してくれた優しさが胸を打ち破るほど嬉しいのと同時に、律の身体を危険に晒している申し訳なさ、そして何もできない自分への猛烈な悔しさが胃の底から湧き上がって喉を焼く。
私は……何をやっているんだろう。
「律……。私……どこか、遠くへ行きたい」
ポロポロとこぼれ落ちる涙を拭いもせず、私が呟くと、律は握った手に少しだけ力を込めた。
「うん、行こう」
迷いのない即答だった。
「実は、お前をどっか連れ出そうと思って待ってたんだ。まあ、俺も?あーだこーだうるさい親父から逃げたかったし」
律は松葉杖を地面に突き、痛む足首にかかる衝撃を噛み殺しながら、私の前を歩き始めた。
背中越しにも伝わる、その覚悟の重さ。
私が逃げ出せるように、律自身も傷ついた足で、世界から踏み出そうとしていた。
私たちは引き寄せられるように、ホール近くの市電の電停へと向かった。
タイミングよく滑り込んできた路面電車に乗り込む。
重い扉が閉まると、ガタゴトという低い振動とともに車体がゆっくりと動き出した。
