掴まれた手首から伝わってきたのは、驚くほど高くなった律の体温と、骨っぽい男の人の確かな力強さだった。
力任せではない。
けれど決して解けない、強い意思を持った掴み方。
「大丈夫だから。……行くな」
見上げると、すぐ目の前に律の顔があった。
汗で濡れた前髪の隙間から覗く、まっすぐな強い瞳。
息を切らし、足の痛みに身体を固くしながらも、私を捉えて離さない眼差しはあまりにも男らしくて、息が止まりそうになる。
「でも、律、汗が……っ! 足だってそんななのに……!」
「大丈夫だって。干からびてミイラになったりなんかしないから」
律は困ったように小さく笑うと、私の手首から滑らせるようにして、ゆっくりと手のひらを包み込んで握り直した。
大きくて、少し熱くて、ゴツゴツとした手。
「そんなことより……お前のことが心配だった」
低く静かな声が、真夏の重い空気を切って私の胸に届く。
「お前らが楽器搬入してるときから、ずっとここにいたんだ。……俺の読み、当たってただろ? やっぱりお前、泣きそうな顔して出てきたんだから」
「なっ……」
照れ隠しのようにフンと鼻を鳴らす横顔。
涼しげで整ったラインを描く鼻筋と唇。
けれどその奥には、泥くさくても私を守ろうとする優しさが宿っていた。
