あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


「……そう。残念だったわね。でもね、あおば。これで区切りがついたじゃない。3年生になる前に、少しでも勉強していた方がいいんだから。来年になって部活引退してから勉強始めたって、もう遅いのよ?大学受験はすぐ来るんだから」

悪気のない、あまりにも残酷な「慰め」。
私がどれだけ血を吐く思いでトランペットにしがみついていたか、その音が自分という存在のすべてだったか、お母さんにはわからない。
わかるはずもないよ!
お母さんは、大学に行って、いい会社に入ることが私の幸せだと思ってる。
じゃあ、いい会社って?
大きくて、安定していて、給料が高い会社?
そのために、今まで必死で頑張ってきたトランペットを諦めろって言うの?
どんなに悔しくても、どうしても諦められないのに?
言いたいことは山ほどある……。
だけど……。

「……うん」

私はそれ以上何も言えず、進路希望用紙をひったくるように奪うと、自室へ駆け込んだ。

ドアを閉めた瞬間、床に崩れ落ちた。
暗い部屋の中、声を殺して泣いた。
進路希望用紙の白い紙の上に、ぼたぼたと涙が落ちて、黒いインクがにじんでいく。
自分には吹奏楽の才能もなければ、勉強ができる頭もない。
何一つ選べず、何一つ残らない。
自分が生きている価値なんて、きっと、どこにもないんだ……。