あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


律の目は、私の泣き腫らした顔と、腕に抱えられた楽譜に注がれた。
一目で、私に何があったのかを察したのだろう。
律は何かを言いかけ、苦しそうに喉を鳴らした。

「……お前、オーディション……」

律が痛む足をかばいながら、一歩こちらへ踏み出そうとした。

——やめて。

言葉にならない悲鳴が、胸の奥で上がった。

今の私には、律の足のケガを心配する余裕なんて微塵もなかった。
自分がオーディションに落ちて、世界で一番惨めで、空っぽで、醜い存在に思えて仕方がなかった。
律の痛みに寄り添うことすらできないほど、私は自分自身の敗北感と苦しみに押し潰されていたのだ。

「……来ないで!」

叫んでいた。
律が目を見開く。
そのショックを受けた顔を直視することすらできず、私は律の脇をすり抜け、振り向きもせずに走り去った。

カツン、と背後で松葉杖が虚しく響く音を聞きながら、私はただ逃げ続けた。