あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


「……白波さん、大丈夫?」

隣の部員が心配そうに声をかけてきたけれど、私は頷くことすらできず、逃げるように鞄を掴んで音楽室を飛び出した。

靴箱へ向かう昇降口の廊下で、私は足を止める。

向かいから、カツン、カツンと、硬く重い金属の音が近づいてきていた。

そこに立っていたのは、律だった。

脇の下に2本の金属製の松葉杖を抱え、右足を痛々しく浮かせたまま、不器用に階段を下りてくるところだった。
浮かせた右足首は、包帯と金属のシーネで重々しく固定されている。

「……律?」

松葉杖……って、なんで?
そんなに、その怪我、酷かったの?

「……あおば」

律が私に気づき、動きを止めた。
松葉杖を握りしめるその手は痛々しく白くなり、顔色は悪く、唇は固く結ばれている。泥だらけで走っていたあのエースの面影はどこにもなかった。

「俺、やっぱ、ついてないわ。これ、疲労骨折だって……全治1ヶ月。ハハっ、ダッセー」

……疲労骨折。

ここ数日、夏休みに入って部活の時間がズレていたから会えていなかった。
まさか、あの足の痛みが、こんな取り返しのつかない事態にまで悪化していたなんて。