あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


ちがう、こんな音じゃない、もっと……!
もっと、出来るはずなのに……。

頭の中で渦巻く焦燥感。
取り戻そうと強引に息を送り込むけれど、傷ついた唇は悲鳴を上げるばかりで、出てくるのは絞り出すような悲鳴に似た雑音だけだった。

「……はい、そこまで」

顧問の短い声で、私のオーディションは終わった。

そのまま全員のオーディションが終わり、部員全員が音楽室に集められた。

「それじゃあ、今年のコンクールメンバーを発表する」

教壇に立った顧問の無機質な声が響く。
心臓が嫌な音を立てて暴れていた。
お願い、神様。
お願い。
あんなに練習したんだから。
唇が切れるまで吹いたんだから。

「……トランペット、鎌田、白石、浜田、中村、田代、松下」

静まり返る音楽室。
私の名前が呼ばれることはなく、そのままトロンボーン部門の発表へと移っていった。

……終わった。

顧問の口から発せられたその名前が、私と松下さんの間に横たわる、決して埋まらない「才能の壁」を突きつけていた。

誰かが小さく息を呑む音が聞こえた。
私を哀れむような視線が刺さるのを感じる。
どこかで期待していた自分が恥ずかしかった。
私のガムシャラな努力なんて、音楽の前では何の価値もなかったんだ。