あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


校内オーディションは、放課後、各パートに分かれてひとりひとり音楽準備室で行われた。

扉が閉まると、外の雑音は完全に遮断される。
部屋の中には、パイプ椅子に座る顧問の先生と、私、そして私の前にたたずむ一本の譜面台だけがあった。

「……じゃあ、白波。課題曲の頭から、ソロの終わりまで」

顧問の淡々とした声が、狭い室内に低く響く。

「はい」

短く答えた自分の声が、信じられないくらい震えていた。
手のひらは嫌な汗で湿り、握りしめたトランペットの銀色の管体が、氷みたいに冷たく皮膚にへばりつく。

マウスピースを唇に当てる。
あの日からずっと練習し続けて、皮が剥げて赤く腫れ上がった場所が、金属の冷たさに触れてズキリと痛んだ。

吸い込んだ空気が、喉の奥で詰まる。

——吹かなきゃ。
私の音を、聴いてもらわなきゃ。
チャンスは、今しかないんだから……!

息を吹き込んだ瞬間、ピリッとした緊張が全身を走った。
けれど、出た音を聞いた瞬間に、自分の血がスーッと引いていくのが分かった。

固い……。
それに……かすれている。

焦れば焦るほど指先に余計な力が入り、ピストンを押す音がカチャカチャと虚しく響く。
高い音へ跳躍するフレーズで、音が裏返り、汚く割れた。