あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


律は泥のついた練習着のまま、少し困ったように頭をかいていた。
その右足首には、白地に肌色が混ざった厳重なテーピングが、素肌が見えないほどグルグルに巻きつけられている。
ここ数日、律の歩き方はどこかぎこちなかった。
けれど「ただの疲れ」と笑うから、私はそれ以上聞けずにいたんだ。

あんなに太く巻くなんて、絶対にただの疲れじゃない。
本当は痛くてたまらないんじゃないの?
大丈夫なの?
問いかけたい言葉は山ほどあったのに、私の意識はそれ以上に、二人の間に漂う甘く切ない空気に激しく引きずり込まれていった。

「返事、今すぐじゃなくていいから……!」

夕日を浴びた彼女の頬は熟した果実みたいに赤くて、まっすぐで、眩しいくらいに綺麗だった。
一生懸命に想いを伝えるその姿は、誰が見ても愛おしいと思うはず……。

それに比べて、私はどうだろう。
上手く吹けないトランペットに焦り、自分を惨めに思ってばかりで、律の抱える痛みにさえ踏み込めないでいる。

小さな頃からずっと隣にいた。
「幼馴染」という都合のいい関係の後ろに隠れて、私だけが律の特別な理解者なのだと、どこかで思い上がっていたのかもしれない。

——やだ。聞きたくない。

胸の奥が、雑巾みたいにギシギシと固く絞り上げられる。
息が吸えない。
あばら骨の裏側が痛くてたまらない。