あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


一学期の終業式が終わった放課後。

私は一人、マウスピースと楽譜を抱えて旧校舎へと向かっていた。
コンクールの校内オーディションは、もう目前に迫っている。
全体練習では松下さんの鳴らす透き通った音色と比べられるたび胸が潰れそうになり、私は逃げるようにあの慣れ親しんだ旧校舎へ足を進めていた。

どうして、上手く吹けないんだろう。
練習すればするほど、私の音は固く縮こまっていく。

軋む廊下を踏みしめて渡り廊下に差し掛かったとき、ふと、角の陰からひそひそとした話し声が聞こえてきた。

「……だから、ずっと前から好きだったの。サッカー頑張ってる律くんのこと」

思わず、足を止めてしまった。
瞬間、体の血がスーッと引いていくのが分かった。

半開きになった廊下の窓から、息を殺して下を見下ろす。
中庭へと続く日陰に立っていたのは、律と、同じクラスでいつも輪の中心にいる可愛い女の子だった。

「……あ」

喉の奥で、引きつった息が漏れる。