あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


部活が終わって校門へ向かう途中、グラウンドの脇を通った。
すでに全体練習は終わっているはずなのに、夕闇の中で一人、ベンチに座り込んでいる律の姿が見えた。

泥と汗で汚れたユニフォーム。
律は右の太ももを上から強くさすり、どこか遠くを見るような顔をしていた。
……なんだろう、あの座り方。
どこか疲れているだけには見えない、妙な違和感が胸の端に引っかかる。
私が声をかけようと一歩踏み出した瞬間、律は私の気配に気づき、ハッと顔を上げた。
そして何事もなかったみたいに立ち上がり、いつもの軽い笑顔を見せた。

「おう、あおば。今、部活終わり?」
「うん。……っていうか、律、なんか足、変じゃない?」

尋ねると、律は「は?」と可笑しそうに鼻で笑い、自分の右足をぽんぽんと叩いてみせた。

「あー、今日ちょっと走る距離多くてさ。ただの筋肉痛。余裕余裕」

その引きつった笑顔と冗談めかした口調に、私はそれ以上何も突っ込めなくなった。
きっと、おじさんからの「退部」という言葉に追われながら、一人でボロボロになるまでグラウンドを走り回っていたのだと思う。

ふたりして、こんなにも必死にやっているのに。
自分を痛めつけるみたいに頑張っているのに、世界はちっとも報わせてくれない。
減点されていくばかりの現実に、私たちは完全に押し潰されそうになっていた。