六月灯のあった翌日。
私は一日中、ただ必死に、なりふり構わずもがいていた。
音楽室の端で、眩暈がするまでトランペットを吹き続けた。
「もっと息入れて! 音が固いよあおばちゃん!」
3年生のパートリーダーの声が飛ぶたび、焦りで視界がぎゅっと狭くなる。
どうして?
なんで、上手く吹けないの?
みんな、同じ譜面なのに。
私、今まで、放課後も休日も誰より練習してきた。
朝練も、誰よりも早く登校して空き教室で練習したし、家に楽器を持ち帰って近所迷惑も考えずに吹き続けてきた。
それなのに、なんで?
なんで、急に吹けなくなってしまったの?
隣で吹く松下さんの音は、澄み切った空みたいにどこまでもまっすぐ伸びていく。
それに対して私の音は、かすれて、詰まって、まるで傷口から漏れ出す悲鳴みたいだ。
松下さんの透明な音が耳に入るたび、胸の奥を削られるような惨めさに襲われる。
悔しくて、怖くて、自分を嫌いになりたくなくて、唇の皮が剥けて鉄の味がしてもマウスピースを力任せに押しつけた。
息が続く限り肺を空っぽにして吹き込む。
だけど、力めば力むほど音は汚く割れ、ただの耳障りな雑音になって響くだけだった。
どうして私じゃダメなんだろう。
どれだけ唇を傷つければ、あの音に届くんだろう。
誰もいなくなった放課後の音楽室で一人、腫れ上がって痺れた自分の唇を指でなぞりながら、私は声もなく泣いた。
