あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


背後から押された私を、律が咄嗟に腕を伸ばして庇ってくれた。
律の大きな手のひらが、私の二の腕に触れる。
浴衣の薄い生地越しに、律の体温がダイレクトに伝わってきて、下駄の痛みなんて一瞬で吹き飛んでしまった。

「はぐれるなよ。お前、迷子になったら絶対泣くからな」
「な、泣かないよ。子供じゃないんだから」

言い返しながらも、律の甚平の裾をそっとつまんだ。
律は少し驚いたように目を見開いたけれど、嫌がる風でもなく、私の歩幅に合わせてゆっくりと歩き直してくれた。
このまま、二人だけどの静かな時間が続けばいいのに、と心のどこかで願ってしまう。

「あれ?東郷じゃん!やっぱり来てたんだ」

不意に、人混みの向こうから賑やかな声が響いた。
ハッとして振り返ると、そこにはサッカー部のチームメイト数人と、それに付き添うように浴衣を着た女子グループが立っていた。
彼らは私の姿を見ると、「あ、なんだ、幼馴染みちゃんも一緒かよー」「お邪魔しちゃった?」「学校でもずっと一緒なんだから、もう付き合っちゃえば?」と、ニヤニヤしながらはやしたててきた。
一方で、浴衣女子たちの私を見る目は、楽しくなさそうだ。
その視線だけで、律の本当の居場所は、私の隣なんかじゃなく、あっちのグループなんだって痛いくらいにわかる。

「あおば?こいつは……そんなじゃねぇよ。ただの幼馴染。親同士が一緒に行けってうるさくてさ」

律がふいっと視線を逸らす。

「はいはい、照れんなよー」と、男子たち。

そう、わかってる。
私たちは、家が隣同士のただの幼馴染。
それ以上でもそれ以下でもない。