でも、うまくいかないんだよ。
やろうとすればするほど、空回り。
こんな気持ち、きっとお母さんにはわからない。
「わりぃ、待たせた!」
人混みをかき分けるようにして、律が走ってきた。
息を切らせて私の前で足を止めた律を見て、私は一瞬、息をするのを忘れた。
いつも学校で見慣れた制服でも、泥汚れのついた練習着でもない。
律は、墨色のシンプルな甚平を着ていた。
少しはだけた首元から覗く鎖骨や、いつもより男らしく見える広い肩幅。
さらりと流した髪から、ほんのりとシャンプーの匂いがして、胸の奥がドクンと大きく波打った。
「……こ、この暑い中、どんだけ待たせるのよ!」
「いや、親父にちょっと捕まってさ。……ていうか、あおば」
律は私の姿を頭からつま先までじっと見つめると、少し気まずそうに頭をかいた。
「……なんだよ、それ。一瞬、誰かわかんなかったわ」
「変、かな」
「へ、変じゃ、ねぇよ。……似合ってんじゃん」
ぶっきらぼうに言われた言葉に、耳の裏まで熱くなるのがわかった。
浴衣の裾をギュッと握りしめて誤魔化す。
いっつも隣にいる律なのに、今夜はなんだか特別な気がした。
出店の前は、歩くのも困難なほどの混雑だった。
いろとりどりの灯籠の光が、律の横顔を赤や青に妖しく染めていく。
すれ違う他校の生徒や家族連れの波に押されて、私の体は何度もよろめいた。
「っと、危ねえ」
