7月15日。
梅雨が明けた鹿児島は、夜になっても容赦のない熱気がまとわりついていた。
鹿児島の中心地にある、照国神社の六月灯。
境内に飾られた無数の大きな灯籠に明かりが灯り、和紙に描かれた切り絵の模様が、柔らかな光となって夜の闇に浮かび上がっている。
神社の鳥居をくぐる前から、出店のソースの匂いと、大勢の参拝客の熱気が生ぬるい夜風に乗って漂ってきた。
「……遅い。何分待たせるつもりよ」
鳥居の少し手前、街灯の薄明かりの下で、私は慣れない浴衣の裾を気にしながら、小さく足踏みをした。
お母さんにクローゼットの奥から引っ張り出してもらった、古い紺色の朝顔柄の浴衣。
下駄の鼻緒が親指と人差し指の間に食い込んで、歩く度に地味な痛みが走る。
髪も慣れない手つきでアップにまとめてみたけれど、なんだか落ち着かなくて、さっきから何度も首の後ろを触ってしまっていた。
『あおば、楽しんでくるのはいいけど、あんた最近、部活はどうしたのよ。大会近いんでしょ?家でだって練習してないじゃない。それに、テストは?返ってきたんじゃないの?見せないってことは悪かったんでしょうけど、2年生だからって気を抜いてると、すぐに時間ってすぎるんだからね。ちょっとは考えなさいよ』
ああ、もう、律のせいだ。
律が約束の時間に遅れてるせいで、嫌なこと思い出してしまった。
家を出る前に言われた、お母さんからの言葉。
考えてるよ。
嫌になるくらい、毎回、毎時間、ずっと考えてるんだよ。
