『これ以上成績が下がったら、サッカーをやめさせる』
――前に律から聞いていた、おじさんからの厳しい通告。
「……まだ、何も見せてねぇよ。今日返ってきたばっかだし」
律は自嘲気味に鼻で笑うと、テスト用紙をぎゅっと強く握りしめた。
西日に照らされた横顔。
強がっているけれど、その目の奥には隠しきれない恐怖が滲んでいた。
家に帰れば、絶対に「テストを見せろ」と言われる。
この赤い数字を見せた瞬間、幼い頃から積み上げてきた自分のサッカーが、大人の一言で取り上げられてしまう。
今夜、家に帰るまでの数時間が、律にとっての残酷なタイムリミットなんだ。
「……やめさせられてたまるかよ」
律は掠れた声で呟くと、一番最悪な点数のテスト用紙を引っ張り出し、長い指で器用に折り始めた。
壊れものを扱うように、だけどどこか自暴自棄な力加減で。
私は無意識に、窓枠に置かれていたあの緑色の使い捨てカメラを取り上げていた。
ギザギザの歯車をジリジリと回す。
不格好な紙飛行機を黙々と折る律の、少し震えている指先と、諦めたくないと足掻いている横顔に、静かにレンズを向けた。
カシャーッ――。
