あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


グラウンドからは、スパイクが芝を蹴る激しい音と、活気あふれる声が聞こえてくる。
そこには、怪我の絶望を乗り越え、チームの中心として縦横無尽にピッチを駆け回る律の姿があった。
ボールを追うその眼差しは鋭く、汗を飛び散らせながら輝く姿は、誰よりも眩しい。

​そして私も、音楽室でトランペットを構える。
九州大会を経て、私の音にはもう迷いも恐れもなかった。息を深く吸い込み、真っ直ぐ放たれる音色は、放課後の校舎に誇らしげに響き渡っていく。

​サッカーも、吹奏楽も、自分の生きる場所で、私たちはそれぞれの光を放ちながら全力で輝いていた。

​部活が終わり、茜色に染まる旧校舎の空き教室に立ち寄る。
窓際の机の上には、あのふたつの写真立てが西日に照らされて飾られていた。
​逃げ出した日の写真と、笑い合えるきっかけとなった日の写真。
その2枚のグラデーションの間にあったのは、残り3%の絶望から二人で世界でいちばん綺麗なサボり方をした、青い春の記憶だった。

​大人たちの用意した答え合わせなんて、もういらない。
私たちはこれからも、自分の足で立ち止まり、悩みながら、自分だけの答えを作り出していくんだ。

​ガラリと引き戸が開く音がした。

​「あおば。ここにいたのかよ。もう、マジで今日は疲れた。早く帰ろーぜ」


​部活を終えたジャージ姿の律が、旧校舎の扉の向こうで待っていた。

​「うん!今行く!」

私は、教室を出る前に窓際の写真立てを振り返った。

あの夏、私たちは初めて、正解から逃げた。
そして今度は、自分たちで正解を作っていく。

「おい、なにやってんだよ。置いてくぞ~」
「あ、もう!待って~!」

私は笑いながら、律のもとへ駆け出した。


『あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした』

ー完ー